第13章 木ノ葉崩し
シズクの持つ特殊な忍術は、長距離だけでなくほんの僅かな距離でも有効となる。つまり戦闘に応用すれば回避能力になり得るのだ。だからこそ、単独でも多少大胆な行動が出来るのだが。
しかし、後ろから観察していた別動隊にいつの間にか回り込まれてしまった。
「クク…甘いな」
短時間ではなかなか相手を惑わせるほどの布石は打てず、進行ルートを読まれ出くわしてしまう。襲い掛かってくる音忍達にすぐさま回避行動をとろうと印を結ぶ。
「…っ!」
流石に逃げられるか危ういと思った瞬間、彼等はその場にズタズタになって倒れた。
「これはこれは…迎えに来ておいて良かった」
低い薄笑いと共に大刀、鮫肌を持った鬼鮫が現れる。音忍達は全て彼が始末していた。
「…鬼鮫さん……ありがとうございました」
わざわざ迎えに来た鬼鮫に驚きつつもシズクは礼を言う。
「アナタに勝手に死なれても困るのでね……早いとこイタチさんと合流しましょう」
里の中心部から遠くはずれた非常時用の隠れ家で三人は合流する。
「…大蛇丸だろう」
木ノ葉が突然襲われた、というシズクからの報告を受けたイタチは一言呟いた。
「敵は砂と音の忍のようでしたが…知っていたのですか?」
「いや…確証はなかった」
「里の様子がおかしいので迎えに行ったんですよ。飛んでもらえば早かったんですがね、知らない場所には飛べないんでしたよね?」
鬼鮫が状況の補足説明をしつつ、シズクに確認してきた。
シズクの空間を移動する能力は、記憶を礎としている。記憶があり、尚且つ訪問したことがある場所にしか移動出来ない。ただし直前に通過したポイントも、認識出来ていれば術発動の対象となり得る。シズクはこれを回避として活用していた。この条件を満たせばそれなりに遠い場所へも移動出来るうえに、戦闘にも応用出来る月の里特有の強力な術であった。