第10章 君と見たい未来
大倉side
訳がわからへん…
どうして今ひなこは
俺の腕の中で泣いてるんやろう?
朝起きてから一日中
ひなこの笑顔を見たくて
仕方なかったのに
泣き止んで欲しくて
抱きしめた腕の中で
ひなこはずっとずっと
泣き続けて
挙句
やっと泣きやんだと思ったら
俺の腕の中から逃げだそうとする…
だから…
訳が分からへんて…笑
「何で…?」
そう咄嗟に呟いた言葉に
ひなこは
泣きすぎて真っ赤になった目で
俺を見つめてきて
その目に見つめられると
なんだか
胸が痛むし
無性に腹が立ってくるしで
「笑った顔が見たかったのに…
何で泣いてんねん…」
そう言って不機嫌に
ひなこな体を引き寄せぎゅっと
抱き締めると
ひなこは
諦めたように小さくため息をついて
「嫌いだからです…」
そう小さな声でつぶやく
「大倉さんが
私を見てないって分かってても
私を好きじゃないって分かってても
それでも諦められなくて
どんどん大倉さんを好きになって
気持ちが暴走してどうしても
止められない…
私はそんな私が大嫌いです…
だからもう私のことは
放っておいてください…
お願いだから
抱きしめたりしないでください…」
そう言って
俺の腕の中から抜け出し
俺を玄関に置き去りにして
部屋の中に入って行く
そんなひなこの背中を見て
余計に腹が立つんは
ほっとけとか
抱きしめるなとか
そんなわがまま言うからや…
俺はやっと気がついたのに
俺が今この世の中で
誰よりも笑顔にしたくて
絶対に手放したくない人
それは他の誰でもなく
ひなこただ一人なんやって…
そんな鈍すぎるひなこには
俺から最大級の愛をこめて
今までで1番の意地悪をしてやる笑