第2章 スマホを落としただけなのに…
そして今現在…
スマホは私の手に戻ることはなく
"スマホを返すために
もっとひなこを知る…"
などと言う
ふざけた理由を並べ
私のスマホを人質に
私より長い足を駆使し
そそくさと公園から少し歩いた先にある
居酒屋に入ったその人は
私が必死に後を追って
お店に入ったときにはすでに
個室に通され目深にかぶっていた
帽子をとり顔の半分を覆っていた
マスクも外して
ビールを片手に私に向かって
ひらひらと手を振っていて…
「お先にいただいてんで…笑?」
そう言って笑う顔が
うん…
無駄に男前だな…笑
うん…?
この男前の顔…どこかで…?
「あーーーー!?」
なんて叫び
後ろに飛び跳ねて
勢いよく頭をぶつけた私に
「ひなこ…大丈夫…笑?」
なんて笑いを噛み殺すこの人は…
「なんで…アイドルがここに…?
大倉…忠義…?」
そう言ってぶつけた頭を抱える私に
「フルネームで覚えてくれてて
ありがとう笑
まぁ、取り敢えずちゃんと座って
飯食おうや。適当に頼んだから
食べれるもんつついて…?」
なんて何ごともなかったかのように
私に手招きをする…
その手に招かれるまま
席に座ってはみたけれど…
ありえない…
いや…
ありえなさ過ぎるこの状況から
今すぐにでも
いつもの平凡極まりない日常に
戻りたくて
「もう…いい加減
スマホ返してもらえませんか…?」
そう呟いた私に
「分かった.、分かった笑
そんな泣きそうな顔せんでも
一緒に飯食うてくれたら
ちゃんとスマホ返すから
早よ食べよ…?」
なんて私に向けられる視線から
そっと顔をそらして
「無理です…
食べられません…」
そう下を向き呟くと…
「なんで食われへんの…?」
と…
諦めてくれればいいものを
さらに追求してくるから…
恥ずかしくて
顔が真っ赤になるのを感じながら
「サイフ持ってないからです!!!」
そうやけくそになりながら
叫ぶはめになってしまったんだ…涙