第8章 過去と痛みと現在と
大倉side
仕事中も
仕事からの帰り道も
家を出てからずっと
頭の中は
かなさんはまだ家にいるんやろうか?
俺のいない間にどこかに行ってしまわんやろか?
本当にかなさんは俺を好きなんやろうか?
そんな不安で埋め尽くされて
誰の声も耳に入らず
散々周りに迷惑をかけて
1日が終わってしまった…
帰り際の丸の
呆れているような
心配しているような
どちらとも言えない視線から
逃げるように楽屋を抜け出し
家に着いて
不安でカタカタ震える手を
必死に抑えて玄関の扉を開けると
「おかえり笑」
そう言って笑うかなさんが
俺の前に立っていて
ほっと息を吐き出した瞬間
込み上げてくる吐き気に
慌ててトイレに駆け込んだ…