第8章 過去と痛みと現在と
「どういうことなん?」
俺の正面に座り
真っ直ぐに俺を見つめる丸の目は
どこか少し俺を責めてるみたいで
「昨日急にかなさんが家に来て
それでなんとなく追い返せなくて…」
なんて…
罪悪感でしどろもどろになる俺に
「うん、それで…?」
冷静に
でも確実に
言葉の続きを求めてくる
逃げ場のない俺は仕方なく
ため息を吐き出して…
「家に泊めた…
今もたぶん俺の家にいる…
と思う…」
そう出来る限り素っ気なく
悪びれずにお伝えしてみたけど
そんなんが通用する…
わけもなく(涙)
俺の言葉を聞いた丸は
「なんでなん?
なんでそうなんの…?
あれだけ傷ついて
周りに散々心配かけといて
また大倉は同じこと繰り返すんや…?
そんで自分がされたみたいに
ひなこちゃんを
ぼろぼろに傷つけるんや?」
怒りながらも
冷静に痛いところを的確に
つついてくる…
俺にだってちゃんと分かってるよ…?
俺がしていることが
ひなこを傷付けることも。
自分が間違ってることも。
それでもかなさんを目の前にすると
当たり前の常識も
罪悪感も
分かってたはずの善悪も
すべての感覚が麻痺して
かなさんしか見えなくなる…
ひなこのことを思い出すと
ずきずきと痛む胸も
きっといつか
何も感じなくなってしまう。
そうなることが
少し怖いと思うんはきっとまだ
俺の中に
ひなこがくれた笑顔や優しさが
残っているからで…
それが消えてしまった時俺は
どうなってしまうんやろうな…?