第8章 過去と痛みと現在と
「かな…さん…?」
抱きしめられたまま
訳もわからずそう懐かしい
その名前を呼ぶと
「うん…
私のこと覚えててくれたんだね。
忠義…すごく会いたかったよ…?」
そう言って
かなさんは昔と変わらない
笑顔で…
声で…
俺に笑いかけ
俺の名前を呼ぶ…
優しく俺に触れる指先は
俺の頬を包み込んで
少し背伸びをしたかなさんは
ゆっくりと俺にキスをする…
触れた唇から伝わる熱さえも
昔と少しも変わらなくて
ゾクリと背中に電気が走る…
「何してんの…!?」
我に返りそう言って
かなさんの体を引き離すと
かなさんは少し
悲しそうに視線を落として
「決まってるでしょ…?
忠義のところに逃げてきたんだよ…」
そう言って
もう一度俺の体に
ふわりと抱きついた…