第13章 嫉妬渦巻く仮装の宴 後編
ヒュー!
政宗が口笛を吹いた。
『ちょっと、やり過ぎでしょ。太夫って。』
『あ、おい。あさひ?』
俯いていたあさひは、弥七の先導で中央に立つと、信長の座る上座に顔を向けた。
『『…っ!』』
『ほう、化けたな。』
家康と三成は視線を外し、光秀はニヤニヤと悪戯に笑いながら上座を眺める。
口を開けたままの秀吉。
獲物を狙うかのように目を見開く政宗。
眉間に皺を寄せる信長。
見たことのない小悪魔仕上がりのあさひは、小さく微笑むと、その場で一回りをした。
「お酌いたします。」
咲が酌をあさひの側におく。
信長の斜め隣に座ると、唇がグロスできらりと輝いた。
『いつもと違う化粧だな。』
「似合いますか。」
『あぁ。』
つけまつげとアイラインの猫目な瞳で、上目遣いに信長を見ると、信長は視線を合わせ、また眉間に皺を寄せる。
「皆様にも、お酌してまいりますね。」
いつもと違う言葉遣い。
きらきらと光る強調した胸元。
てらてらと光る唇。
それぞれを見た信長は、不機嫌そうに酒を飲んだ。
あさひは秀吉に酌をする。
「秀吉さん?」
『あ、あぁ。』
「変?」
『いや、綺麗だ。』
秀吉の視線は唇と胸元に。
酌をされた杯は傾き、畳に染みが出来ていた。
「政宗は、お茶だね。」
『よく化けたなぁ。太夫なんて…』
「政宗の簪も付けてるよ。」
『あぁ、かっさらいたくなるくらい綺麗だ。』
うふふっ。
あさひの柔らかな笑い声が、広間を惹き付ける。
「家康?」
『お前、あさひの胸元ばっかり見るなよ。』
『み、見てません!』
『見てた!』
「見てたの?」
『はぁ。あんた、そんな格好ダメだから。』
「仕置き覚悟だから…」
あさひがちらりと信長を見る。
不機嫌そうな瞳と視線が合った。
「まぁ、家康。ほら、飲んで。」
『うん…。ねぇ、あさひ。綺麗だ。』
家康の呟くような誉め言葉に、あさひは顔を赤らめた。
「あっ、ありがと。」
『三成は、やめとけ。』
「え、政宗。なんで?」
『鼻血出るぞ。』
「あ、大丈夫?三成くん。」
『はっ、はい。大丈夫です。』
「お酌していい?」
『お願いします。…あさひ様、伺いたいことが。』
「ん?なに?」