第13章 嫉妬渦巻く仮装の宴 後編
其々が普段と違う一日を終える。
夕闇に月が輝く頃、宴は始まった。
まだ、武将達は仮装のままである。
『信長様、乾杯の音頭を!』
『皆、今日も大義である。乾杯!』
『『乾杯!』』
『政宗さんだけどね、今あの人。』
『お前、唐辛子あったか?』
『ええ、部屋に取りに行ったら光秀さんに会いましたよ。俺の知らない間に薬品棚を漁ってました。』
『おいおい、物騒だな。』
『そういえば、政宗さん。視察の帰りに町娘に囲まれてましたよね。』
『あぁ、楽しかったぜ。』
『へぇ。』
『三成はあの格好で、書庫にいたらしいぞ。』
『はぁ、結局変わらないじゃないですか。』
『光秀様、火縄銃の火薬の配合について調べることができました!』
『ほう、良かった。』
『光秀様になれたからこそ、得た知識です。』
『それは、光栄だな。俺も薬は盗み損ねたが…。まぁ、目星はつけたからな。後で譲ってもらおう。』
『私もご一緒しても? 家康様の薬品棚を拝見したいです。』
『あぁ。』
『今日一日、信長様の政務の多さとそれを的確にこなす手腕に感服いたしました。』
『あぁ、解ればよい。』
『これからも御支え致します。』
運ばれる豪勢な食事と美酒に酔いしれ、家臣達も振り回された一日を振り返り騒ぎ始めていた。
『あさひはまだか?』
『そうですね。咲、咲?』
『はい。』
『あさひはまだか?』
『…えぇ、只今。』
『準備出来ていたのか?』
カン…
カン…
『なんの音だ?』
『木打ちでしょうか…』
木打ちがする方からは、ざわざわと騒がしい声が聞こえる。
『これは…美しい。』
『まさか、あさひ様か?』
『あ、あれ、弥七と吉之助だろ?』
『あさひ様か?あさひ様が、太夫?』
『『『 太夫?! 』』』
家臣達のざわめきは大きくなり、予想外のフレーズに、武将達と信長は立ち上がる。
『あさひ様、お着きでございます。』
咲が一礼をすると、静かに広間の襖が開いた。
弥七の肩に手を引きながら、ゆっくり俯きながら広間に入る。後ろからは番傘をさす吉之助。
垂れ下がる輝く簪と妖艶な黒の椿がふんだんに描かれた打ち掛け。前に締めた帯に輝く帯飾り。
露になった胸元には、ラメパウダーが輝き濡れたように見える。