第13章 嫉妬渦巻く仮装の宴 後編
あさひが仮装するもの。
それは、現代で見た花魁になりきる事だった。
『化粧は派手目に。髪結いは簪を沢山つけますから、結い上げてください。』
誰よりも本気になった咲が、弥七と吉之助の気付けを始める。
『吉之助、あんたの番傘はこれ。』
『お、おう。』
「ねぇ、咲。化粧を派手目にするならさ。私の国で使う化粧道具つかってもいい?」
『…、お任せします。』
あさひは500年後で使っていたポーチを出し、手際よく広げ始める。
ビューラー
マスカラ
アイライン
チーク
口紅
グロス
ラメパウダー
つけまつげ
『それは、あさひ様の国の化粧道具ですか?』
「あ、うん。たまたま旅先で使うかと思って持ってたの。」
ビューラーで睫毛を上げ、つけまつげをつける。
マスカラで整えて、猫目にアイラインをひく。
チークは頬骨にぼかして。
胸元や首にラメパウダーをつける。
口紅をつけた後、わざと下唇だけにグロスを塗る。
手慣れた所作に咲も食い入るように見ると、みるみるうちに小悪魔あさひの出来上がり。
「どうっ?」
『はぁ、予想以上です。目のやり場がありません。
…簪つけますよ?』
咲は、手慣れた様に結い上げた髪に藤をあしらった簪をつけ、後頭部はべっこうの櫛をさす。
「政宗からの簪もつけたい。」
『はい、では反対側に。帯は秀吉様のものにしましょうか?』
「うん!」
『小袖はさいしに白、次に赤を。そしてこの花柄。』
「沢山だね。」
『打ち掛けは黒の椿を。』
「あ、ねぇ。襟と胸元をもうちょい下げたいんだけど。できればギリギリまで。」
『はぁ?』
「更に妖艶にしたい。」
『太夫はそこまでしませんよ?』
「あさひ太夫はするの!」
『はぁ、知りませんからね。帯は前に締めますよ。』
現代で見た少しエロチックな花魁。
あさひはそれを目指し、また咲も本気で作り上げた。
『なぁ、やりすぎじゃねぇか?俺、肩貸しであさひ様の胸元見えそうで困るんだが。』
『俺だってうなじが露になってるんだ。直視できねぇよ。』
『想像してみろ?このお姿を見た武将様達や信長様を。』
『『はぁぁ。』』
面倒事に巻き込まれた、弥七と吉之助は同時にため息をついた。