第13章 嫉妬渦巻く仮装の宴 後編
『大雨の洪水対策は?』
『はい、堤防を高めにしました。』
『じゃあ、上流の土の中の岩を堤防の堀にしたら?』
『なるほど!三成、あ、いや、家康様!よき考えですな!』
『あ、…うん。』
『武芸ともに秀でているお方ですが、三成様の羽織を羽織られるを輪をかけて聡明で…』
『…もう、いい。』
『ふっ。さて、昼にしねぇか?ほら、差し入れだ!』
『あ、ありがとうございます!』
ガサガサ… ガサゴソ…
『どうした?』
『…ない。』
『は?』
『三成の羽織だから、唐辛子ない。あぁ、くそっ。』
『ま、食え。山椒焼きとかがあるからな。』
『はぁ。もうやめたい。』
『そうかぁ、俺はここまで来る道沿いで町娘たちに声かけられて良かったぜ?』
『あんたはね。』
『お前もだろ?家康さまぁ!紫もお似合いですぅ!ってな。』
『…黙ってもらえますか?』
『まぁ、今日一日楽しもうぜ?』
『はぁ、面倒。』
※
【厨】
『おや、政宗殿!』
『あぁ、ご苦労。気にするな。』
『は、はい。』
足早に厨を探る青い羽織の信長。
隻眼のため、信長とわかるものがおらず、溶け込んでいる。
ガサガサ ガサゴソ
『無いな。あやつめ、どこに隠した。』
『何か探し物でも?』
『…。あぁ。信長様がな、金平糖を所望されていてな。秀吉がここに隠している瓶を探している。』
『金平糖…? 中身を見るな、と秀吉様に言われている壺ならありますよ。』
『真か。』ニヤリ。
『はい。野菜が置いてある笊おきの下です。布で隠れているでしょう?めくってみてください。』
『あぁ。』
信長は、言われた場所を探る。小さな坪が並んでいる。中身を見て、信長の口元が緩む。
カリカリ。
『ま、政宗様!それは信長様の!』
『ふっ、わしがわからぬか。』
信長は眼帯を外して見せた。
『えっ、信長様!』
『秀吉には言うな。この場所は知らぬ振りで通す。』
『はっ、はい。』
『ふたつほど、空き瓶はあるか?』
『あ、こっ、こちらに。』
信長は、空き瓶の一つに、全ての小瓶から均等に金平糖を移し八分目とし、二つ目は三分目とした。八分目の方を懐に隠すと、満足そうに、厨番の男に話しかけた。
『褒美だ。子供に渡せ。秀吉には言うなよ。』
信長は、厨番の男に三分目の小瓶を渡し青い羽織を翻した。