第13章 嫉妬渦巻く仮装の宴 後編
その後、夜の宴まで城内は大混乱となった。
広間に続く廊下では、主君を探す家臣や城勤め達が右往左往している。
※
『秀吉様はどちらだ? この書類に署名がいるんだ。』
『あぁ。信長様の羽織を羽織られていた。広間にいらっしゃったぞ?』
『広間に? 確か、政宗殿と信長様だけだったが?』
『あぁ、だからその信長様が秀吉様なのだ。』
『は?…お前、疲れてるんじゃないのか?』
『なんでだよ?』
『だって、信長様の羽織を羽織られていたのが秀吉様?そんな馬鹿げた話あるか!』
『今日は、武将様達が着物を交換してるんだ。ほら見ろ、光秀殿を!』
『…なっ!家康殿の羽織、寸足らずだな。』
『それ、家康殿の前で言うなよ。』
『はぁ。じゃあ広間にいる信長様が秀吉様か。行ってみる。』
『あぁ、あっ!気を付けろよ、隣の政宗殿の羽織の方は信長様だからな!』
『はぁ?なんだよ、それ。わけわからんぞ?』
※
『家康殿、消毒用の酒が少ないので買い付けにいって参ります。』
『あぁ、普段はどのくらい買い付ける?』
『高い度数のものを50弱は…』
『そうか。では、此度は40。10は宴用の酒にする。買い付け終われば教えろ。』
『はっ。…宴用の酒?って、光秀殿!』
『あぁ。』
『家康、殿は?』
『治水工事の現場視察だ。三成の羽織を着ているぞ?』
『な、なぜ?』
『なぜだろうなぁ。あさひの考えは未知数過ぎて解りかねる。』
『奥方様の考え…?』
『さあ、酒の買い付けにいけ。』
『は、はい。帰ってきたら知らせろ。今日は一日、俺は家康だ。薬品棚や薬をみたい。』
『は、はい。』
『お、おい。いいのか?』
『何がだ?』
『あれは、家康殿の羽織を羽織られている光秀殿だぞ? 薬品棚や薬は見せていいのか?』
『あ、そうだな。でも…もう無理だな。』
『まぁな。相手が光秀様なら駄目とは言えないな。』
『…だな。薬品棚を確認しとけ。無くなるかもしれないぞ?』
『そうだな。家康殿に叱られないようにしなければ。
…だがな。何故羽織を交換してるんだ?』
『さぁな。奥方様の考えだそうたぞ?』
『奥方様…、失礼極まりないが。ややこしすぎて政務がはかどらん。』
『あぁ。全くだ。』