第12章 嫉妬渦巻く仮装の宴 前編
「あっ!良いことを思い付きました!」
『なんだ?あさひ?』
「皆が皆になればいいんです!」
『『はぁ?』』
その場にいた信長と光秀以外が声を揃えると首をかしげた。
『ふっ、成る程。』
『小娘は面白い事を考えるな。』
信長と光秀の声を聞きながら、あさひは軍議で使った文机にあった和紙と筆で何やら書き始めた。
「出来ました! これから皆にこのくじを引いてもらいます。そこに書いてある人物にお祭りでなりきってもらいます。衣装…、装束は本家の方から借りてくださいね!」
『ふっ、面白れぇ。じゃあ、俺が信長様を引いたら信長様になれるって訳か。』
『政宗!畏れ多いぞっ!』
『三成、家康になれるやもしれんぞ?』
『光秀様、本当ですか!』
『…なっ。やめろっ!』
「1日だけだから…」
『くじは恨み無し、必ず従え、良いな。』
信長の低い威厳のある声に広間は静まり返る。
「恨みって、そんな重くないから…
じゃあ、皆で一斉に引きますよ。せーの、で。」
『せーの?』
「え、家康、なに?」
『せーの、ってなに?』
「掛け声だけど。」
『掛け声は、そんなんじゃねぇ。』
「は?」
『いざ、尋常に… 勝負!で引くんだ。』
「…政宗。そうなの?」
『…なんでもいい、早くしろ。』
「はぁ、じゃあ掛け声はそれでいきますよ。
いざ、尋常に…」
六人があさひが作り握り締める和紙のこよりくじに手をかける。
『「勝負!!」』
広間に沈黙が訪れた。
『ほう。』
『なっ…』
『これは、また。』
『なるほどねぇ。』
『…最悪。』
『素晴らしい。』
「じゃあ、和紙に書くからお一人ずつ言ってくださいね。」
あさひは文机に向かった。
信長様 → 政宗
『俺が隻眼か。ふっ。面白い。』
秀吉さん → 信長様
『畏れ多い… 有り難き幸せ。』
「秀吉さん、泣かないで?」
光秀さん → 家康
『薬の調合が自由に出来るな。』
家康 → 三成くん
『…。』
「い、家康?」
『…。』
政宗 → 秀吉さん
『こりゃ、城下に繰り出すしかねぇな!』
『おいっ、風紀を乱すな!』
三成くん → 光秀さん
『鉄砲も上手くなりますでしょうか?』
『仮装だけで成るわけないだろ?撃ち抜かれてしまえ。』