第12章 嫉妬渦巻く仮装の宴 前編
『…っ、誰が誰だかわからんぞ?』
『あぁ、今日はどうされたのだ?』
紅葉が静かに散り出した神無月の安土城。
名だたる織田軍の武将達に遣える家臣達は、互いに顔を見合わせため息をついていた。
『はぁ、我が主は何処にいるのか…。』
『あぁ、あさひ様に聞こうにもいらっしゃらないしなぁ。』
『今日の安土は… なんなのだ?』
※
事の発端はほんの数日前の軍議後。
『あさひ、貴様のいた世では秋祭りはあったか?』
「あ、はい。ありましたよ。収穫祭や文化祭…」
『収穫祭はわかるが、ぶん か、祭?』
秀吉が片言のように呟くと、首を傾けた。
「通っていた学校…、寺子屋みたいな所で各々の作品を展示したり炊き出しや…仮装をしたりするの。」
『仮装?』
「あぁ、政宗。えっとね…、町人の格好をしたり、普段やらない格好で過ごすの。」
『あぁ、じゃあ光秀が諜報で潜入する時に商人に化ける事とかか?』
「まぁ、そんなのかな?商人に化けるんですか?光秀さん。」
『まぁな。』
『女になったり、老人になったり… ほんと、化け狐。』
「光秀さん以外は仮装したりはしないんですか?」
『はぁ?するわけないじゃん。馬鹿じゃない?』
『ですが、家康様。私は自分では到底なれないものに扮するということに憧れも感じます。』
『…ふっ、俺はお前には絶対なりたくない。』
『…仮装か。悪くないな。』
『「えぇっ?」』
『おっ、御館様。仮装をして祭りを開くのですか?』
『今は先の戦も収まり穏やかだ。そのような戯れがあってもよかろう?』
『はぁ、…。』
「じゃあ、ハロウィンみたいにお菓子を配ったらいかがですか?」
『はろ ういん?』
「はい、仮装をしてお菓子を配るお祭りがありまして。」
あさひは、ざっくりと自分が知るハロウィンについて話始めた。
『よし、面白そうだ。暇潰しにやるぞ!』
『えぇ、面白そうです。菓子は俺に任せてください!』
『さて、何に化けようか。』
ニヤリと笑う信長と政宗、光秀。
『はぁぁぁ。面倒事が始まった。』
ため息をつく家康。
『しかし、何に仮装する?準備も何も…』
現実的な秀吉。
確かに秋祭りと称する仮装祭りにむけて準備をするにも、初めての事だらけである。
「そうですねぇ、仮装の準備も時間が必要ですし。」