第11章 同じ釜の飯を
「政宗は、おにぎりどうする?」
『中くらいのにしよう。』
『家康。』
「はっ。」
『あさひの典医としても、我が軍の将としても大義である。』
『ありがとうございます。握り飯は、中くらいのにします。』
「はい、家康。」
『貴様らも、咲。弥七、吉之助。
あさひの世話、礼を言う。』
『ありがとうございます!』
「私の握ったおにぎり、食べてね。」
あさひは小さな握り飯を三人の皿にのせた。
【私の握ったおにぎり】
武将達は、小さくない皿にのる握り飯を見る。
【これは、誰が握ったんだ?…まさか。】
『さぁ、食うといい。』
『『いただきます。』』
満足気に、食べ始める姿を眺める信長。
不安げに見つめるあさひ。
それは、突然起こった。
ぶほっ!
ごほっ!
盛大に吹き出す秀吉と三成。
『この握り飯、塩多くないか?』
『ええ、かなり…』
「…それ、信長様が握ったの。」
『えっ!』
『なっ!』
秀吉と三成は目を丸くする。
『…あさひ、こっちのは塩辛くないけど。』
「あ、家康と政宗、光秀さんのも信長様が握ったの。塩加減は私がしたの。」
『なるほどな。』
『秀吉、不味いと申すか?』
『い、いえ!ごほっ、美味しくて…。げほっ。目が覚めます!』
『目が覚める握り飯って何?』
『なぁ、あさひ。汁物の大根。でかくねぇか?』
「あ、政宗。大根は信長様が切ったの。」
『え、あっ!そ、そうか。』
『政宗…』
『歯応えがな!あっていいよな!…な、家康!』
『…巻き込まないでください。』
げほっ!
ごほっ!
また、盛大に吹き出したのは、秀吉で。
『青菜と豆腐、卵の炒め物…、少し塩辛いな…ってまさか。』
『俺が炒めた。』
「あ、味付けをね。塩一つまみを一握りと間違えて…」
『ははっ!卵でとじて味を整えたって訳か。』
「うん。だめだったかな?」
『だっ、ダメじゃないぞ!上手い!上手くてな、泣きそうで…』
『秀吉、残すなよ?』
『あ、えっ。は、はい!』
『一摘まみと一握り、間違うってどうなの?』
『家康!』
『皆、食べた後な、茶をたてる。茶屋から菓子を買って用意した。』
「新作だって!」
『ゆっくり食すがよい。』