第11章 同じ釜の飯を
「卵で味が柔らかくなればいいんですが。」
『汁物は?』
「はい、大根はした湯でしたので、青菜と大根と茸を入れて味噌で溶きます。」
『豆腐は?』
「あ、入れます。」
厨からは、味噌汁の匂いがし始める。
「よし、一品と汁が出来ましたね!次は…」
『まだ、あるのか?』
「おにぎりです!」
『握るのか。』
「もちろん!手に少し塩をつけて…、あちっ。」
『手に塩を…』
「ちょっとつけすぎ?」
皿には大きさのバラバラなおにぎりが並び始める。
『よしっ!』
「出来たぁ!」
『あさひ様、皆様お戻りです。』
「はーい。」
「信長様は、咲とお膳を並べてください。」
『わかった。』
信長は、広間に向かう。
背中が見えなくなるとあさひは、信長が塩加減を半端なく間違えた炒め物を味見した。
「…やっぱり、ちょっと、しょっぱい。」
※
『御館様!私たちがやりますから、お座りを!』
たすき掛けをして膳を並べる信長の姿に驚き慌てる秀吉と三成。
同じように驚く政宗と家康。
くつくつと笑うと光秀。
『皆、座れ。』
『は、はっ。』
『咲、弥七、吉之助。お前達もだ。』
「私たちもですか?」
『御館様?なにを?』
『これから昼を運んでくる。待て。』
「持ってきましたよ!」
『あさひ!何がどうしたって言うんだ?』
「今日は皆に日頃の感謝を込めて、信長様と二人で昼げを作ったの!」
『なっ!真ですか?』
『へぇ、信長様が。』
『大丈夫なの?』
『くっ。』
其々の反応を横目に、信長は、料理番の持ってきた鍋から汁物を椀によそう。
『秀吉。』
『は、はい!』
『毎日、俺の片腕としてよくやっている。』
『は、はっ。有り難き幸せ…』
「はい、秀吉さん。おにぎりはどれにする?」
『じゃあ、この大きいのにしようかな。』
「こっちは、炒め物。」
『光秀。』
『はっ。』
『汚れ仕事、大義である。』
『はっ。』
「光秀さんは?」
『この中くらいのしよう。』
『三成。』
『はい!』
『戦術、いつも見事。』
『ありがとうございます。』
「三成くんは?」
『秀吉様と同じく大きいのを。』
『政宗。』
「はっ。」
『先陣を切る戦ぶり、見事。』
『ありがとうございます。』