第11章 同じ釜の飯を
『そうか?』
『あさひ、止まれ。なんだ?着物おかしくないか?』
「えっ。そ、そうかな?」
『袂…なんか入ってないか?』
「べ、べつに? ほら、おかしくないよ?」
あさひが腕をあげようとした拍子に、ガツンと小瓶がぶつかり合う音がした。
『なんの音だ?あさひ?』
袂を触ろうとする秀吉。
『秀吉。貴様は奥の着物を乱すのか?』
『えっ、いや、そうではなく…』
『では、その手はなんだ?』
『あ、いや。』
秀吉が信長の方を振り返る。
その時信長は、片手でひらひらと合図をした。
【今のうちに行け】
こくりと頷くあさひは、音もなく歩き出す。
『あさひの着物や袂が不自然で、小瓶のぶつかる音が…。なぁ、あさひ。
はっ!』
『ふっ。』
『あぁ、もう!御館様!あさひ!』
秀吉と信長の攻防は夜まで続く。
こっそりと城に戻った光秀、政宗、家康も秀吉に見付かると逃げるように自室に戻っていった。
信長が感謝を伝える昼の宴は明日。
秀吉が泣いて喜ぶのも明日…。