第11章 同じ釜の飯を
『これから仕入れにいくぞ。』
「え、今から?軍議は?」
『終わった。秀吉が光秀たちを追いかけていってるうちに行くぞ。』
「は、はい。じゃあ、明日よろしくお願いいします!」
『ふっ、頼んだぞ。』
『は、はい!』
信長が差し出した手を握り、二人は繋いだ手を揺らしながら城下に向かった。
※
『いつもの茶屋にするか?』
「そうですねぇ。」
賑わいのある城下。城主と奥方の姿に驚く町人たち。
しかし、その仲睦まじい姿は、次第に溶け込み、周りも受け入れ始める。
「こんにちは。」
『おや、
あさひ様、…っと、のぶっ!信長様!』
『いつも世話になっている。』
「明日、城で秀吉さん達皆と食べる甘味を選びに来たんです。」
『…ほぅ、皆様で。では、秋に向けての新しい甘味などいかがでしょう?』
そういうと、主人は指示をだす。
すぐに、皿に乗った栗饅頭と紅葉の形の練りきりが出された。
「わぁ!美味しそう。」
『どうぞ。』
あさひは栗饅頭を手に取り、半分に割って信長に渡す。主人は、その姿に目を丸くした。
「栗がごろごろ!」
『うまいな。甘過ぎず、茶に合いそうだ。』
「練りきりも美味しいですよ。」
『あぁ。よし。これを…八個ずつ、明日の昼までに届けよ。』
「…10個ずつ、です。」
『は?』
「信長様と私の分が入っていません。」
『…もてなす側なんだろう?』
「…食べたい。」
『ふっ、仕方ないな。10だ。出来るか?』
『勿論で御座います!』
『頼んだ。よし、行くぞ。』
信長は、またあさひに手を差し出す。
迷いなく繋ぎ歩き出す二人を、店主はにこやかに見送った。
城に向かって歩き出す。
賑やかな風景を見回しながら歩いていると、信長が急に立ち止まった。
「のぶ、ながさま?」
『ちょっと来い。』
「えっ?」
歩き始めると鼻をくすぐる甘い匂い。
『見付けたぞ。』
「あ、お菓子の露店。最近できたのかな?」
颯爽と店の中に入る信長を、やはり店主が驚きながら声をかけた。
『のぶっ、信長様!?…なにか、店にありましたか?
南蛮から仕入れた物を並べただけでございます!』
「ま、まさか。」
『あれをすべて寄越せ。』
信長が指差したのは、きらきら光る金平糖。
「色合いが見慣れないですね。」