第11章 同じ釜の飯を
『それなら、やっているではないか。労をねぎらう宴だろう?』
夕げを済ませ天守にて文をしたためる信長の隣で、その妻あさひは、ひとつの提案をしていた。
「いつもの宴のような形ではなく、将が家臣達の日々の働きに感謝して、もてなすんです。私の生まれた時代では、そうやって労ったりもします。」
『褒美をあげているではないか。』
「それで…考えたんですが。信長様がやらないことをしてあげるというのはどうでしょう?」
『何を誰にするというのだ? 兵や家臣なら山ほど…』
「信長様、身近で感謝しする相手はいますか?」
『…おらん。』
「…いるでしょ。」
『誰だ?』
「信長様の代わりに政務をこなす秀吉さん。
織田の為に危ない仕事をしてくれる光秀さん。
戦で欠かせない軍師の三成くん。
先陣を切る頼もしい政宗、医師としても将としても頼りになる家康。」
『…あやつらに、感謝…。』
「みんながいなければ天下布武はなしとげられません!日々の働きをいつもと違ったやり方でもてなしましょう!」
『ところで、貴様は感謝する相手はいないのか?』
「私は、信長様と同じ五人の他に、咲と弥七さん、吉之助さんです。」
『ほう。咲、弥七、吉之助はお転婆な貴様が世話になっている。俺からも感謝せねばな。』
「お転婆って!」
『間違いではなかろう。…して、なにをする?』
「はい。信長様がやって驚く事。考えました!
それは…」
あさひはパチンと手を合わせて、信長の耳元で囁いた。
『…俺にそれをやれと?』
「私と一緒に、です。信長様がやらないことをやって、みんなを驚かして、日々のありがとうを伝えるんです。」
『…俺はやったことはないぞ?』
「ふふふっ。だから、いいんじゃないですか!」
あさひは、悪戯に笑いだす。
『楽しんでおるな。』
「想像したら、おかしくて。」
『して、いつやる?』
「いいんですか?」
『嫌だと言ってやめられるのか?』
「…やりたいです。」
『愛する貴様の提案だからな。西への統合に向けて士気も上がるだろうしな。』
「じゃあ、準備がありますからね。二日後のお昼なんてどうですか?」
『よし。俺より貴様が動いた方が良いな。準備は任せるぞ。』
「はい!明日から準備に入ります!」