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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第9章 天女の歌声 前編


「た、確かに。弥七さんの言うとおりかも。」

『じゃあ、一緒に来てもらって離れて待っててもらえば? そしたら皆さんも安心だろうし。』

「…うん。仕方ないか。」

『…佐助殿、何をなさるんですか?』

『カラオケです。』

『…桶?』

佐助とあさひは互いに顔を合わせ笑う。
その様子を、首をかしげながら三人は見ているのだった。
次第に歩き出す二人を、三人はゆっくり着いていく。


その背後で揺らめく白の羽織りに気付かずに。





『ここでいいかな?』

そこは茶屋から歩いてすぐの小川。
川縁には小さな花が咲いている。
水面は陽の光で煌めいていた。
咲と弥七、吉之助は少し離れた木陰に腰を下ろした。

「きれい!ベスポジ!」

『…横文字、すごい使うね。』

「せっかくだからね!」

『じゃあ、早速。なにから?』

「国民的ロックユニットのあの有名曲から。」

『あぁ、あの最後に【やぁ!】って飛び上がるやつ?』

『そう、そう。夏によく聞くよね。』

ふふっと笑いながら、あさひは息を吸い込んだ。
佐助が伴奏を歌い出す。
それに合わせてあさひは飛び上がりながら笑い、歌い始めた。

風にのせて楽しそうな歌声が三人のもとへやって来る。

『お国の歌、ですかね?』

『はじめて聞く旋律だな。』

『…、歌いたかった、のかもしれませんね。何にも邪魔されずに。』

優しく離れたあさひの背中を見つめた咲は、二人へ、この事は内緒にするように話したのだった。

「はぁ、楽し!…次は。」

『あれは?国民的アイドルグループの【花屋~】から始まる代表作。』

「いいね!」

それからも、お互いに曲をいい、一曲一曲歌う。
そのあとあさひは天を仰いだり、川縁を眺めた。

『そろそろ時間じゃない?』

「うん。じゃあ、最後に好きな歌うたってもいい?」

『うん、なに?』

「ちょっと… 切ない歌。」

『…わかった。聞いてる。』

それから、あさひが歌ったのは、会いたくても会えない人を思い叶わない恋を歌った、今のあさひの状況には似つかわないような切ない歌だった。



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