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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第9章 天女の歌声 前編


ー三日後。


あさひは、軍議のあと信長に外出の許可を取っていた。

『家康、傷は問題ないか?』

『はい、大丈夫です。』

『そうか…、日暮れよりも早く戻れ。』

「はい。必ず。」

『城下からは出るなよ。反物屋か?』

「茶屋にも行きたいです。」

『ふつ、奥方は活発だ。』

『今日は、俺達も政務が溜まっててな。咲、弥七、吉之助。頼むぞ?』

『こやつは、いささか調子に乗りやすい。』

「ちょ、信長様、ひどい!」

『心得ております。』

「えっ、咲。ひどい。」

信長に頭を下げながら、咲と弥七、吉之助は肩を揺らし笑っている。

「…お土産、買ってきます。」

にこりと笑うと、一礼をしてあさひは立ち上がる。

『気を付けるんだぞ! 転ばないように。あ、あと食い過ぎるなよ!反物は必ず弥七か吉之助に持たせて…』

秀吉が膝立ちになり、あさひを呼び止めた。

「わっ、わかってるよ!」

『心配性な兄様は、今日も健在だな。』

『ふっ、煩い姑よ。』

『…はぁ、大袈裟。』

『早く政務を終わらせて城下行こうぜ!』

『いい案ですね、政宗様。』

おろおろとしながらあさひを見送る秀吉と、それを楽しそうに見る武将達。

…平穏なはずの1日が始まった。





ー城下。


『ここで、わ、別れる?』

『何を仰るのか解りかねません。』

「咲、怒らないで。」

『怒ります。』

咲の表情は能面の様になり、あさひの顔もひきつり出す。

『私共が叱られます!』

「さ、佐助くんと待ち合わせてて。」

『佐助殿と?』

「久しぶりに故郷の話をしたいから、…二人っきりがよくて。」

『では、信長様に…』

「だめっ!」

『え?』

「し、心配するでしょ?」

『はぁ。』

「必ず、必ず一刻経ったら、この茶屋に戻るから。
ねっ、お願い。咲。弥七さん、吉之助さん。」

『俺からもお願いします。』

あさひの背中から、聞きなれた声が響いた。

「佐助くん!」

『危ないところにはいきません。あさひさんを必ず守ります。』

『…約束ですよ?』

「うん。あ、みんなには内緒にしてほしいの。」

『じゃあ、城に戻れないじゃないですか!』

「あ、…うん。だめかな?」

『ダメでしょう。私共だけが城下でうろついていたら怪しすぎます。』
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