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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第7章 紫陽花の面影


『大丈夫か?』

咲の腕の中でうなだれるあさひを、信長は切なげに除き込んだ。

『泣きすぎてしまったのでしょう。お部屋へ運んでいただけますか?』

『あぁ、もちろんだ。』

信長は、あさひを抱き抱え自室に向かった。
あさひを見つめる信長は、とても切なげで、誰も声をかけることはできなかった。





「…ん? ここは、、。」

ゆっくりと目を覚ますと見えたのは自室の天井だった。
風にのって食欲をそそる昼げの匂いがした。

『起きたか?』

「…信長、様。」

『紫陽花の元で、眠ったのだ。体は、大事ないか?』

「はい。ごめんなさい。私…」

あさひは、紫陽花の元での事を思い出した。
そして、母の面影に【会いたい】と叫んだことを。

「信長様、私、…私は、。」

『心配しなくてもよい。』

『咲でございます。入りますよ。』

ゆっくりと襖が開くと、湯気のたつ湯飲みを盆にのせた咲の姿があった。

『白湯でございます。ゆっくりと召し上がりください。』

「お咲、ありがとう。ごめん、心配かけちゃったね。」

『滅相もありません。』

『あさひ。』

「はい。」

『貴様の母上は、どのような方であった?』

「え?」

唐突な信長の問いに、あさひは一瞬言葉を失った。

『聞かせろ。』

『私も、知りとうございます。』

『俺達もだ。』

襖の先を見ると、優しげに、そして切なそうに見つめる秀吉と三成、光秀が立っていた。

『責めているのではない。母に会いたいのは当たり前だ。会えぬなら、貴様の中の母上を話せ。』

「…はい。」

あさひは、一瞬うつむき目を閉じ、話始めた。


怒るより笑うことが多かったこと。
母の作る卵焼きと煮物が好きで、その味付けが政宗の作るそれと似ていること。

時々、一緒に着飾って街に出てふらりと買い物をして、食事をしたこと。

将来の話をしたこと。
どんな時でも味方だと手を握ってくれたこと。


親戚の結婚式で、私の花嫁姿が楽しみだと、笑いながら泣いていたこと。


楽しそうに話すあさひは、花嫁姿の話で声を詰まらせた。


『俺は、どんなに愛しても、貴様の母上の代わりにはなれぬ。すまぬな。』

「いえ、信長様。私は貴方と共に生きることを選んだのです。後悔は…、してません。」



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