第6章 安土城の夏の過ごし方
「お咲、この反物はどうかな?」
『涼しげな紫陽花柄ですね。』
あさひは、うん。と頷いてから主人に話しかけた。
「これの色味違いありますか?」
『はい、桃色と藍色がございます。』
「では、その二種類を下さい。」
『二種類でございますか??』
驚いた咲があさひに尋ねる。
「信長様と私の分。色味違いで浴衣見たいのを作ることにしたの。」
『信長様と色味違い…?』
「まぁ、楽しみにしてて。」
ふふっと、笑うとあさひは支払いを済ませ反物屋を後に城へ向かった。
※※※
それから、あさひは軍議の後に張り子部屋に通いながら、買ってきた反物で信長と甚平と、自分の甚平を仕立て始めた。
あさひの甚平は、履き物の部分をスカート型にした。
(これを着て城下とかに行きたいな。
遠乗りでもいい。
お揃いの服で過ごす夏なら、きっと楽しい。
あとは涼しげな何かだよね。
かき氷っても、氷は貴重だし。
プールもないし。
でも、水掛けならできるかな?
信長様に聞いてみよう。)
あさひは、止まらない笑みを堪えて針を進めた。
※
夜になり、いつものように天守で信長と夕げを済ませると、最終的な丈合わせも含めながらあさひは信長に話しかけた。
「私の世の夏に切る甚平というものを作りました。
ちょっと丈合わせをしていいですか?」
『甚平?』
「はい、こうやって合わせた浴衣のような上着と、膝を出した短い履き物です。
作ってみたんですが、苦しくないですか?」
『あぁ、大丈夫のようだ。紫陽花柄も夏らしいな。』
「でしょう? だから、私も色味違いで作りました!
またお揃いが増えましたよ!」
『貴様もか。着て見せよ。』
「え、私のは自室にありますから…」
『取りに行けばよい。』
「まだ仮縫いなんです。もう少しで出来ますから、そしたらお見せしますよ。」
『貴様のも、足をこのように出すのか?』
「はい、私のはもうちょっと、履き物をヒラヒラさせてます。」
『ほう。』
「楽しみにしててくださいね!
あ、それと、涼しげな何か、ですが…」
『何かあるのか?』