第5章 おんなのこのひ
急に信長様が来たものだから、部屋の準備やさらしを用意してくれている女中さん達はびっくりしたって後から聞いた。
信長様も怒った様子で怖かったって。
私を褥に寝かすと、すぐに家康の診察が始まった。
『いつから?』
「…今朝から。」
『頭痛の他には?』
「…寒気と、お腹の、痛み。」
『はぁ、なんで言わないの?』
「あの、…ごめんなさい。」
月のものが始まるからって言いたかったけれど、信長様と家康が放つ気配が怖くて、つい謝ってしまう。
『風邪じゃないみたいだけど、病かもしれないから医者呼ぶよ。』
「え、それは…」
『なに?』
『あさひ、言うことを聞け。』
「ごめんなさい。
…あの、でもね。あの、…」
『だから何?』
月のものが始まるからって、それだけなのに、今更恥ずかしくなる。
『あさひ! 黙っていたと思えばなんなのだ!』
信長様の怒った声が響く。
多分、襖の外で控えてる女中さん達は凍りついてるだろうなって思った。
ちらっと襖の方を見たら、秀吉さん、政宗と三成くん、光秀さんまでいて、大事になってるし。
頭も痛いけど、今の状況の方が辛くなってきて、呟いた。
「月の…」
『は?』
「月のものが、…始まる前に、こうやって体調崩すことがあって…」
『え、うん。』
「たぶん、それ。」
『…あ、うん。そう…。え? 病じゃないの?』
「うん。そう思う。…ごめんなさい。」
『はぁー。』
肩を落として苦笑いする家康。
襖の外でも、一安心、と苦笑いする光秀さんと政宗、顔を赤らめる秀吉さんと三成くんが見えた。
「前もよくあったし、寝てれば…大丈夫だから。」
『…大丈夫じゃないだろう!』
信長様の怒った声に、部屋は静まり返った。
『なぜ言わない。貴様は俺のものだといっただろう!』
「でも、月のものが、なんて恥ずかしいし…。」
『関係ない!』
「はい。」
『今日は仕置きだ。』
「え?あの…、それはちょっと。」
『…今日は無理です。信長様。』
ため息混じりに家康が信長様に話す。
『何が無理なのだ!隠し事をするあさひが悪い!』
「そうですけど、今日は仕置きは無理です。」
『何故だ! 家康、貴様いい加減に…』
「月のものが来るからです!」