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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第1章 二人の距離


『秀吉、付いて参れ。』

(えっ?)

『御意。でも、近くまでですよ…。』

(行くのかよ…)

不思議な主従関係に半ば呆れながらも、これで収まるなら。と誰もが願った。

すぐに信長は、秀吉を連れあさひの部屋に向かう。

『織田軍を振り回す女はあいつくらいだな。』

『俺と家康で着物選んでやるか。』

『政宗さん…それじゃ、意味ないでしょ。』

『あさひの為に甘味でも作るか!』

『仲直り出来れば良いのですが…』

廊下からバタバタと近付いてくる足音が聞こえる。


『え、戻ってきた?』

『秀吉、どうしたんだ? 謝ったのか?』

『あさひが、部屋にいないんだ。』

『はぁ?』


※※※※※


広間であさひ会議が繰り広げられる少し前。

あさひは、秀吉を馬鹿!といった後、自室へ戻っていた。
しかし、なんだか落ち着かず、気分転換にと城下へ行ったのだった。

(あんな言い方しなくてもいいのに! 久々にお出掛けできるんだから信長様の好きな着物にしたかっただけなのに…)

(でも、そういえば良かったのかな…。なんか子供っぽい。)

怒りに任せて歩いていたは立ち止まり、ため息をつく。

(帰って謝ろ。)

踵を返し、城へ向き直る。

すると目に飛び込んできたのは、珍しい菓子が並ぶ店だった。

(あ、あれあるかも。)

あさひはその店に入っていった。



(あった!)

片手で握られる瓶に、きらきらした金平糖が入っている。

『これ、ください。』

(仲直りに、渡そう。)

嬉しそうに商品を受けとると、足早に城へ向かった。

その時。

『暴れ馬だぁ!』

少し離れた場所から叫び声が聞こえる。

黒い大きな馬が、鞍を付けたまま走り出していた。
市の品々を蹴散らし、止めに入る男達を撥ね飛ばす。
『巻き込まれたら怪我どころじゃねぇ。お客さん、店に戻りな! 早く!』

菓子屋の店主があさひの袖を引く。

『子供が!子供がいないんです!誰か!』

店の反対側から、母親が馬が近づくのに怯えながら、子供の名前を叫ぶ。

(子供、どこ…)

あさひが目を走らせると、母親の後ろにある路地から、子供が駆け出した。
もう、馬が寸前の所まで来ている。

「危ない!」


あさひは、思わず駆け出した。



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