第5章 おんなのこのひ
この時代って、どうしてるんだろう?
そう思ったのは、この時代に来て二ヶ月あたりが経った頃だった。
この時代で初めての生理。
月のさわり、とか月のものっていうみたい。
私の最近のそれは、環境や精神的な変化に体は正直で。
遅れるし、かなり軽くすんでいた。
それでも対応の仕方はわからないし、なにも持っていなくて、お世話になっている女中さんに聞いたりしていた。
この時期の女性は下着じゃなくて、腰巻きを巻いてるから、私の常識は通用しなくて、困った。
余ったさらしとかを自分なりに仕立てて使って、どうにか乗りきっていた。
今回のそれも、軽くて準備してるもので事が終わると思っていた。
※※※※※※
「頭痛いな…」
久しぶりの頭痛に、裁縫も進まない。
…というか、やりたくない。
天気のいい朝げの後。
もうすぐ、軍議の時間だ。
なんでこんなに頭痛いの?と思って、ゆっくり考えて気づいた私は、天守から自室に戻った。
ここに来て何回目かの月のさわり。
きっと、これのせい。
箪笥(たんす)から張り子の仕事の合間に作った、紐のハーフパンツに似せたものを出して、腰巻きのなかに履く。
何枚か作っておいてあって、それを履き回して乗り切るのが決まり事の様になっていた。
でも、こんなに頭痛いのは久しぶり。
前の時代にいた頃みたい。
頭痛から始まる時は、かなり辛いんだよな…
嫌な予感しかしない体の不調に不安を持ちながら、私は軍議のある広間に向かった。
広間へ向かう廊下で会ったのは、二人。
一人はお世話になっている女中さん。
『軍議ですか?あさひ様。』
「…はい。」
『…顔色が宜しくないようですが。』
「頭が痛くて。」
『まぁ! ご無理をなさってはいけません!』
「大丈夫。月のものが始まるから、そのせいです。」
『…では、私もお支度致しますね。』
「いつもすみません。」
『軍議が終わる頃、白湯お持ちしますね。』
「お願いします。」
軽く頭を下げると、苦笑いをしながら女中さんはパタパタと去っていった。
女中さんは、いつもこの時期に沢山のさらしを集めて、洗ってくれる。
きっと、この時代のやり方とは違うのに、私の希望に合わせてくれてる。
それが有り難かった。