第4章 戦場の向日葵 ー後編ー
『信長様、どうしたんだ?』
『手を広げてますね。』
秀吉と三成が不思議そうに呟く。
辺りは急に静かになった。
「ほんと、…」
『え?』
「ほんと、困った人。」
『あさひ様? なんでしょう?』
「秀吉さん、これ持ってて。」
あさひは、ばさっと打ち掛けを脱ぐと秀吉に渡す。
『え、な? あさひ?』
『あさひ様?』
「綺麗にしたのに。」
あさひは、秀吉に預けた打ち掛けをちらっと見た。
そしてすぐに、
手を広げる信長のもとに駆け出した。
『あ、おい!あさひ!』
止める秀吉の声には振り向かない。
「おかえりなさい!」
まっすぐに
愛する信長の胸に飛び付く。
どこからともなく笑い声が響く。
『やっぱりあさひは、そうでなきゃ。』
『嬉しそうに飛び付いて、可愛い奴。』
家康と政宗が笑う。
ふっ、と意地悪に笑う光秀。
呆れながらも優しく微笑む秀吉。
『お似合いです。』
優しく呟く三成。
向日葵を導く太陽のように
照らし続けよ
俺の宝よ。
どんなことがあっても
必ず戻る。
俺たちの向日葵みたいな笑顔。
絶やさないように
お前を守るよ。
みんなの帰る場所を守るよ。
信長様とみんなが笑顔になれる場所を。
だから大丈夫。
私も一緒に生きるから。
側で歩ませて。
あさひの簪の六色の飾りが、夕陽に照らされ虹色に輝く。
六人の左手の腕輪も夕陽に照らされ輝く。
安土の夕暮れは、優しく過ぎていった。
完