第4章 戦場の向日葵 ー後編ー
軽い頭痛で目覚めた私は、布団の中だった。
見慣れた天守の天井じゃなく、自室の天井。
あれ、どうしたんだっけ?
広間の活け花しようとして、水汲みに行って。
あぁ、話を聞いちゃって、自信がなくなって。
苦しくなったんだっけ。
そして…
頭痛いなぁ。
『目、覚めたか?』
「秀吉さん。」
『息が出来なくなってた。倒れたんだ。』
「ごめん…なさい。」
『無理して明るく振る舞いすぎだ。』
「…はい。」
『大丈夫だ。ちゃんとみんな帰ってくるから。』
秀吉の手が頭をそっと撫でる。
瞼がまた閉じようとする。
バタバタバタ!
『あさひ様、秀吉様!』
『三成、走るな。あさひも眠れないだろ!』
『はぁ、すみません。でも、お知らせが。』
『知らせ?』
『皆さんが帰って来ますよ!』
「…え?」
『光秀様のお付きの忍が文を持ってきました。
あのあと、光秀様はかなり迂回なさったそうですが、大名の支城から嵐のあと出立した本隊と合流。
夜営をしながら戻って来ていると。』
『そうか。良かった。』
涙が溢れた。
秀吉さんも、三成君もいるのに。
涙が止まらなくて、
みんなが、信長様が無事なことが嬉しくて
私は声を出して泣いてしまった。
それじゃなくても、頭痛いのに。
『もう、泣いていいぞ。寂しかったな。』
『あさひ様は素晴らしいです。』
『いつ頃到着、と書いてあった?』
『明日の夕暮れまでには、だそうです。』
『そうか。…今日は、寝てろ。あさひ。』
「え、でも…」
『もういいから。
倒れた後に無理させて、お迎えに影響があったら、御館様に顔向け出来ないからな。』
『私達は隣の部屋で仕事をします。何かあれば呼んでください。』
「うん、ありがとう。」
『あぁ、大丈夫だ。』
そういうと、また秀吉さんは私の頭を撫でてくれた。
ゆっくり、ゆっくり。
そうしたら、ふわふわと微睡んで知らぬ間に眠ってしまっていた。