第3章 戦場の向日葵 ー中編ー
ようやく戦が収束し、あさひの元に戻れると思った矢先だった。
大名の治める支城で、小競り合いの後片付けをして、安土に向けて出立した間もなくに、嵐が来た。
前に進めないほどの豪雨が行く手を遮り、やむ無く支城へ引き返した。
早馬で知らせようにも、雨が止まない。
あさひ、泣いていないか。
俺は、この雨を恨んでいるぞ。
お前を泣かせるような、この雨を。
安土からの秀吉の文で、貴様の様子は手に取るように知っている。
台所の手伝いや掃除をして、毎日笑顔を絶やさず励んでいるようだな。
姫としての作法など微塵もないが、人々の心を掴む力は天下一品と、秀吉は誉めていたぞ。
俺が留守の間に、強くなったか?
家康も政宗も、貴様の話になると明るくなり癒されているようだ。
家康は、貴様の笑顔が向日葵の様だと話していたぞ。
だが、俺はそうは思わない。
貴様の笑顔は、太陽だ。
向日葵は俺たちで。
向日葵は、太陽を追いかけるように花の向きを変えるのだろう。
どんなに離れていても
どこにいようと
嵐が来ても
闇が来ても
貴様の笑顔が、帰る道しるべになる。
だから、あさひ。
必ず戻る。
案ずるな。
戻ったら、たくさん愛でて抱き締めてやろう。
俺の中の足りないあさひの部分を満たしてくれ。
愛している。