第3章 戦場の向日葵 ー中編ー
信長からの文が届き、帰還が決まった知らせに、だれもが喜んだ、その日の夕方、
激しい嵐が安土を襲った。
それはあさひのいた時代で言う台風の様で、翌日の昼迄、豪雨はおさまらなかった。
ようやく雨が上がり、雲間か見せる光で虹が出来る。
あさひは、その虹を広間で眺めていた。
『畑が水浸し?』
『山崩れ?』
『なに?橋が?』
『崖崩れ?』
城には嵐の後の城下の状況が報告される。
市や住居には影響がさほどなかったが、山沿いの橋が流されたり、崖崩れが起こっている、との知らせが届いた。
「信長様達の帰り道は大丈夫かな?」
『あぁ、あそこらも橋もあるし山沿いだからなぁ。』
「帰って…来れるよね?」
『大丈夫だ。政宗や家康もついているから。』
「うん…。」
帰還予定は今日の夕方。
昨夜からの嵐の中、帰還するとは思えなかった。
あさひの胸の中に、ざわざわと不安が込み上げていた。
夕方になっても隊からの連絡はなく、光秀と三成が安土の国境まで確認に行くことになった。
「まだ、嵐の後だから気をつけてね!」
『光秀、三成。頼むぞ。』
『兄様は、姫と城を頼むな。』
『光秀、ふざけるな。』
『行って参ります。』
二人が馬に、ふわりと跨がる。
「あ、待って!」
『?』
「左手だして。」
光秀には白、三成には紫を基調とした腕輪が付けられる。
「お守り。気をつけて。」
『ふっ、俺にも作ってくれたのか。』
『あさひ様、ありがとうございます。』
『兄様には、ないのか?』
意地悪に光秀が笑う。
『いいから、行け!』
『はい!』
二人は馬を走らせ、駆けていく。
「みんな、怪我がないといいね。」
『あぁ。大丈夫だ。』
秀吉は、あさひの頭を優しく撫でた。
『あさひ、。』
秀吉は、腕輪は俺にはないのか?と、聞きたいが聞けないでいる。
「あるよ、ちゃんと。」
そういうと、笑ってあさひは秀吉の左手に緑を基調とした腕輪をつけた。
秀吉は、なんともそれが嬉しくて腕輪を眺めていた。