第18章 梅薫る、春恋の風
はぁ、なんなの?
『秀吉、大声出すな。冗談だ。…まぁ、家康。そういうのは人の手を借りずに自分で渡せ。』
『いや、あんた達が奏信様の部屋に行くって言うから!』
『…ふっ。家康、優しくな。女の子には優しさが大事だ。』
そう言って肩をたたくと、秀吉さんは政宗さんを連れだって部屋を出ていった。
優しく、なんてわからない。だから、秀吉さんに頼んだのに。
もうすぐ陽が傾くようだ。暖かそうな光が、開けっ放しにしていった襖から射し込んでいる。
『閉めていきなよね。』
そう呟いて立ち上がり襖に手を掛けた。梅の香りが仄かにする。
春が近づいてきた。
※
『わぁ、おいしそう!三つずつあるから、咲と湖都ちゃんと私で分けれるね。夕餉の後のデザー…、甘味にしようか。』
あさひが嬉しそうに湖都に話しかける。
『いえ、私など畏れ多いです。。あさひ様が召し上がってください。』
『大丈夫だよ。湖都ちゃん、朝から奏ちゃんの側に付いてくれたでしょ。ご褒美、ご褒美!』
『…宜しいのでしょうか。』
『…いいんじゃない?』
一通り診察を終えた俺は遠慮する湖都に向かってそう言った。
用意してあった手桶で手をすすぐ。すると、真新しい手拭いが差し出された。
『…悪い。』
受けとると、彼女の指先や手の甲が酷くあかぎれていた。
『奏ちゃん、どう?』
『喉の赤みと腫れは変わらない。ただ、それに効く薬は調合したからちゃんと飲ませたら徐々に良くなると思うよ。政宗さんに、夕餉の膳に餡のみの小鉢を頼んだからそれで飲ませたらいい。』
『わかった!ありがとう。今日は、湖都ちゃんお願いね。』
『承知しました。』
『え、あんたが毎食食べさせてるの?』
『うん。元気な時は広間で奏ちゃん食べさせて、信長様にお酌して。そしたら、秀吉さんが代わってくれたりする。
今は、風邪引いてるから出来る限り食べさせてから広間に向かうよ。』
『へぇ。出来る限り自分で世話したいって話してたもんね。
…で、今日は何で湖都に任せるの?』
『え、家康。知らないの?』
『何が?』
『久しぶりに皆が揃ったからって、今日は宴だよ?』
『…は?』
聞いてないから。
『政宗が、仕度に張り切ってたからご馳走じゃない?』