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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第18章 梅薫る、春恋の風


『そう。…わかりました。まず、診察してきます。』

『あぁ、頼む。』

俺は信長様に一礼をして、土産をあさひに渡すと天守を出て奏信様の部屋へ向かった。




『奏様、白湯を御飲みになりましょう。汗をかいておられます故、お召し物も変えなければ。』

奏信様の部屋に近付くと、女の声がした。
咲か?…いや、咲も梅大祭にむけ、女中の仕切りをしていたな。
じゃあ、湖都か。

『…入るよ。』

『はっ、はい!い、家康様!』

『あぁ。…奏信様の診察に来た。』

『そうでしたか。では、私は…』

『え、どこ行くのさ?』

『あっ、水桶を変えてきます。』

『いや、ちょっとそのままいてくれない?
あさひから、奏信様に一番付いているのはあんただって聞いた。奏信様の様子が聞きたい。』

『私で、…宜しいのでしょうか?』

『は? あさひも咲も梅大祭に掛かりっきりで、あんたが世話してるって聞いたけど。』

『…は、はい。』

『まず、診察するから、あんたは座ってて。』

そういうと、湖都は一礼して隅に座った。

顔色。
爪の色。
手足の温かさ。
喉の赤みや腫れ。
胸の音と息遣い。
腹の張り、腹の動く音。

『咳、してるって聞いたけど。』

『は、はい。』

『…してるの?』

『え、あっ。頻繁ではありません。喉が御辛いのか咳払いをするような感じです。』

『白湯は飲めてるの?』

『ほんの一口。お口に溜め込まれて飲み込むまでに時が掛かる場合があります。』

『薬は?何飲んでる?』

『あ、こちらです。』

そう言うと、胸元から小さな薬包を出した。
…へぇ。ちゃんとしてる。

『最後はいつ飲んだ? 昼餉の後?』

『はい、でも出してしまいましたので…』

『そう。これ借りてく。あんた、何で薬包を胸元に入れてたの?』

『あ、すみません。』

『いや、何で?』

『御世継様のお薬ですから、おいそれと置いてはおけませんし。
咲様やあさひ様もお忙しい様でしたので、私が持っておりました。…申し訳、ありません。』

『…いや、謝ることはない。懸命な判断だ。試すようで悪かった。』

『あ、いえ…』

安心したのか少し口元を弛ませた湖都は、俺に小さく頭を下げた。













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