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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第17章 唐物の赤い壺の秘密 後編


「なんか、急に力が抜けて…」

私はその場にへたり混んでしまった。

『はぁ。…行くよ。俺の馬に乗る?』

家康の差し出してくれた手を取り立ち上がる。
夕暮れに傾き始めた陽の光が、家康の髪に反射していた。

【黄金色に輝く柔らかな絹糸】

「ほんとだぁ。」

無意識に家康の髪に手を伸ばす。

『な、なに?!』

「あ、えっと、さっき佐助くんがね…」

『あぁ!あさひさん!言わないで!言わなくていい!』

光秀さんと先を進んでいた佐助くんが、走って引き返して来るのが見えた。

『佐助?…が、なに?』

「あのね。」

『言わなくていい!』

眉間に皺が寄る家康が、恥ずかしそうにそっぽを向く。
佐助くんが、頭をかいて一礼する。

『黄金色の絹糸かぁ。俺にも触らせろよ。』

『なんでですか!』

じゃれる政宗。

「私も!」

『あ、じゃあ俺も…』

『お前達、いい加減にっ!』

『やれやれ、帰るぞ!また秀吉の小言が増える。』

『それは、困るな。急ぐぞ!』

『早く行くよ、ほら乗って。』

家康は、言葉とは裏腹に優しく馬に乗せてくれて。

無事に?終えた作戦とこの数日の慌ただしさを振り返りながら、私は四人と夕暮れを背にそびえ立つ安土城へ戻るのだった。




※※※



先日と同じように全員が天守に集まり、一部始終の報告を終えた。

『皆、大義であった。件の大名は予定通りの手筈で捕縛に向かう。間者を送り込み謀反を企をだ罰はくださなければな。』

あの女中に扮した忍は、その大名が壺を持って謁見に来た際に紛れ込んだそうだ。
光秀さんの尋問で直ぐにわかり、大義名分がそろった制圧に、政宗の眼はぎらついている。

『佐助、尽力には感謝するが…』

秀吉さんが、姿勢をただして佐助くんを見た。

『えぇ、俺は姫の軒猿であっただけです。』

『ふっ、こやつは余計なことはせぬ。なぁ、佐助。』

『はっ。』

『佐助。今日の夕餉までが乗りかかった船だ。ゆるりと過ごせばよい。』

『じゃあ、宴だな!信長様、準備に厨に向かっても?』

『あぁ。好きにしろ。』

『では、私も捕縛した輩と茶でも飲んでくるか。』

光秀さんが一礼して政宗の後を追うように、天守を出た。

『茶じゃなくて血じゃないの?』

「家康、怖いよ。」

『それより、あさひ。あんた怪我してないの?』





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