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暁の契りと桃色の在り処 外伝 【イケメン戦国】

第17章 唐物の赤い壺の秘密 後編


「あ、うん。大丈夫。転んだりもしてないしね。」

『そう。じゃあ、俺は大名の制圧の準備と策の確認をしてきます。秀吉さん、いいですか?…三成。お前も。』

『あぁ。では、失礼します。あさひ、信長様に壺を割ったことやら諸々、謝れよ。』

『あさひ様、御武運を。』

「えっ、ちょっと!」

『じゃあ、俺は光秀公の忍に挨拶でもしてこようかな。お二人様、ごゆっくり。』

「さ、佐助くん?」

パタパタと全員が天守を去り、信長様と二人になった。
吹き込む風は、少しだけ夜の香りがする。

「信長…さま?」

『ふっ、貴様がこの壺を割らねば、間者の存在は知り得なかったからな。褒美に、今は、抱かぬ。膝を貸せ。』

私の膝り頭を預けて、ごろりと横たわる、

『諸々の仕置きは、宴の後だ。』

私の髪を指で遊んだ信長様は、ちょっとだけ髪の毛を引っ張った。距離が近付いて、私たちはうっすらと顔を覗かせた月に見られながらキスをした。



その後の宴は、何時ものように盛り上がった。
美味しい政宗の料理を食べて、皆で黄金色に輝く絹糸を触る。
私は秀吉さんの小言を聞きながら、からかう光秀さんの相手をする。
気づけば政宗は寝ていて、その隣で、ため息混じりに家康がお酒を飲んでいた。
すると、信長様が佐助くんを呼んで、何だかこそこそと話し込む。ニヤリと笑った信長様は、ちらっと秀吉さんを見た。
秀吉さんは、気づいてなかったけれど。

そして、私は信長様に抱かれて中座する。

『我奥は些か仕置きが必要でな。皆、ゆるりと楽しめ。』

『『ははっ。』』

『信長公、宿泊の許可までありがとうございます。
あさひさん、じゃあまた。』

皆に見送られ、広間を出る。
存在感を増した大きな月が見えた。
信長様の首周りに抱きついて、うなじにキスをしてみよう。

きっと、少しだけ赤らんだ顔で叱って。そして愛してくれるはずだから。



あれから、あの壺は私の部屋に、今も飾られている。
二重底も佐助くんが修理して、外すための細長い針は私の裁縫箱の中にある。
表向きは、あれから私が気に入ったことになっているけれど…。
二重底の中には、きらきら光る金平糖。

今日も、政務合間の息抜きと言って、厠の後に魔王様がやってくる。


そう、だから今日も
赤い壺の秘密は絶対に内緒。






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