第17章 唐物の赤い壺の秘密 後編
『やられた。』
「あ、あの子!」
『すまないねぇ、こいつは迷子になりやすいし、手先も器用なんでね。姫の軒猿何て、大したことないねぇ。
お姫様、あんたが傷物になれば安土は大騒ぎだ。その隙を付いて我主が攻めいる手筈。殺しはしない。すこーし痛いだけさ。
さぁ!覚悟決めなっ!』
『万事休す…』
「佐助くん…」
『…あ。よし。あさひさん、口許を隠す手拭いか何かある?』
「あ、うん。」
『よし、じゃあ、合図をしたら手拭いで鼻と口を押さえて眼を摘むるんだ。そのあと、抱き上げるから驚かないで。』
「えっ。」
『いいかい?』
『なに話してるんだい?』
がきん!
佐助くんが、もう一度私を背にしながら相手の刀を受けた。
その後、ぺろっと指先を舐めて指を立てる。
「いいかい?いくよ。 three、two、One、Down!」
佐助くんの合図に言われた通りにする。
微かに唐辛子の臭いがした。
『『うわぁ!』』
ダダッ!
私を軽々と抱くと、佐助くんは、飛ぶように駆ける。
微かに城下の喧騒が聞こえる場所で、佐助くんは私を下ろした。
気づけば、そこは【待ち合わせ場所】だった。
『大丈夫?痛くなかった?』
「うん。佐助くん、あれ、唐辛子?」
『そう。家康公に渡そうと思った自家製。懐にいれといて良かった。風向き的に直撃しそうだったから。うまくいって良かった。ここまで来れれば、…うん。上等だ。』
佐助くんは、周りを見渡しながらそう言った。
『でも、相手も腕がいいみたいだ。もう追い付いてきた。』
「えっ!」
彼女と数人の忍が刀を抜いて追い付いてきた。
『こしゃくな真似を!』
『やはり、腕がいい忍みたいだ。』
『なんだ?敗けを認めたのか?軒猿もこの程度とはな。』
『敗けではないさ。』
『なに?』
『勝ちを核心したんだ。あとで、俺のウエストポーチ返してもらうよ。』
がきん!
バタバタ!ぐあっ!
佐助くんの話が終わった瞬間に、砂ぼこりが舞って闘う音がした。ゆっくりと佐助くんの背中から顔を出せば、光秀さんの忍が捕縛を終え、彼女の頭には、光秀さんの銃が当てられていた。
『佐助、よくやった。』
『お誉めいただき光栄です。光秀公。』