第15章 魔王様の徒然なる育児日記
『…政務の途中、長い厠、奏様もいない。』
『…っ!まさかっ。』
『ふっ、ようやくか。』
『まさか、、お二人で…。』
『秀吉様?』
『輝真。城下だ。お二人で城下に行かれたんだ。』
『じょっ、城下ですか?…まさかっ。』
『そうだ。あぁーっ!急ぐぞ!目的は金平糖だ!それに、夕げを前にお二人で甘味でも食べてるかもしれん!奏様が夕げを食べられなくなる!…光秀、お前わかってたな!』
『さぁな。』
『帰ってきたら、お前も説教だからな。』
『お前も、とは他に誰がいるんだ?』
『…っ!うるせぇ。行くぞ、輝真!』
秀吉は、事態をうまく飲み込めないでいる輝真の手を引き、バタバタと城門へ向かった。
※※※
『喜んで頂けて良かったですね。』
仕立てた着物を届け終わり、土産を買うために甘味処に向かうあさひに咲が声をかけた。
「頑張って良かったよ。さて、お土産買って帰ろ。奏ちゃんも起きてるかもしれないし。」
咲と並んで歩くあさひの前と後ろを弥七と吉之助が挟んでいる。すると、前を歩いていた弥七が足を止めた。
「…どうかした?」
『はい、いや、…あのお姿。御館様と奏信様ではないかと。』
『「…えっ?」』
あさひと咲は弥七の指差す方向を見る。
「…ほんとだ。ちょっと、お菓子屋さんじゃん。あれ、奏ちゃんなんか持ってる?」
『風車、ですね。信長様、なにか買われているようですよ?』
「絶対、金平糖だよ。」
『嵐の予感が致します。』
「うん、私も。」
四人は、奏信を肩に抱く信長を目指し駆け寄った。
※
「のぶながさまっ!」
『あぁ。あさひ。帰りか。』
「あ、はい。…じゃなくて、どうしたんですか!」
『奏と散歩だ。』
『はーうえ、くるくる!』
「わぁ、奏ちゃん良かったね。父上に買ってもらったの?」
『おあんごも。』
『…奏。』
「お団子?…食べたの?もう少しで夕げなのに?」
『信長様、お待たせ致しました。…ってあさひ様!』
菓子屋の店主が、風呂敷包みを信長に手渡す。
「こんにちは。」
『いつもありがとうございます。また、仕入れが出来ましたらお知らせ致します。』