第15章 They are police.
「おかえりなさい。」
ニッコリと微笑む女性。
楓「ただいま、ベルモット。」
そのまま、廊下の壁に背を預けている女性の前を通ろうとした。
ベ「随分と遅い帰りだったわね。」
楓「・・・あら、いけない?」
ベ「いいえ?私も帰る事を伝えていなかったし、食事は済ませて来たんでしょう?」
楓「えぇ、勿論。」
そう言って部屋に戻ろうとした。
ベ「FBIが言ってきたわ。子供はどこだって。」
足が止まる。
ベ「妙な話だと思わない?フォーギヴン。」
くるりと振り返り、ベルモットを見る。
楓「えぇ、そうね。おかしな話だわ。ねぇ、ベルモット?」
ベ「あら、なに?」
楓「その女性、貴方始末してこなかったんでしょ。メインサーバーを危険に晒したと、ジンに言われても仕方ないと思うわ。」
ベ「逆に考えればいいわ。何処から漏れたのかがそうすれば分かるもの。」
楓「・・・悪いけれど、それは難しいわ。」
ベ「あら、どうして?貴方の素顔を知っている人間なんて限りがあるじゃない。すぐに特定できそうなものだけれど?」
言おうかどうか、悩んだ。けれど、このままではきっと、キールが死ぬ。それは別に構わないのだけれど、あの人にまで手が伸びると困る。
楓「リースリング。」
ベ「・・・?」
楓「アクアビット。キャンティ。コルン。ライ。シェリー。・・・生きてる人物を上げるとなるとまだまだあがるけれど。」
ベ「コードネーム持ちがどうかしたの?しかも、裏切り者まで。」
楓「私の顔を、一度でもフォーギヴンとして見たことがある人間たちよ。」
そう言えば、ベルモットは目を丸くして壁に背を預けるのをやめた。
ベ「・・・いつのまに、そんなに。」
楓「私にも任務は課せられるもの。」
ベルモットの拳に力が入ったように見える。
ベ「・・・それで、目星は?」
楓「さぁ?記憶は既に“消してしまっているから分からないわ”。」
そう言い残して部屋に戻る。
ベルモットは追いかけてこなかった。