第13章 Vermouth
あの方にも報告を済ませ、久々にフォーギヴンの部屋に戻るが少女の姿はどこにもなかった。
ベ「・・・珍しいこともあるものね。」
本人からの返信を見れば、どうやら同級生と泊まり掛けで遊びに出掛けているらしい。適当に返事を返し、少女がいつも座っているデスクを見つめる。
少女は、最近動き回ることが増えた。もちろん、いい意味でだ。情報が欲しいと言えば即座に連絡をくれるのは今まで通り。
けれど、その文面に少しだけ、継続的に連絡を取っていなければ分からないくらい、ほんの少し。人間味を帯びた文面になった。それは紛れもなく少女の変化を見せている。
ベ「・・・貴方はもう、ただのお人形じゃないのね。」
机にソッと手を置く。
無表情のまま、淡々と仕事をこなす少女。
どんな無茶な命令も、非情にこなしてきた少女。
そんな少女はもう、いなくなりつつある。
ベ「・・・成長期、とでも言うのかしら。」
今までにない表情を見せるようになったフォーギヴン。
愛らしい。可愛い私のフォーギヴン。
誰にも、渡すつもりなんてない。私の知らないところで、何かをさせるつもりなんてなかった。“ナニカ”があっては困る。
ベ「ねぇ、フォーギヴン。私、貴方を信じているのよ。」
サラリと机を撫でる。
ベ「どうか、私を裏切らないで頂戴ね。」
言葉は、暗い部屋の空気に溶けて消えた。