第13章 Vermouth
ベ「私よ。任務を伝えるわ。組織の施設を跡形もなく破壊しなさい。」
電話をするなり、そう告げたベルモット。思わずギョッとしてしまうのも致し方ないだろう。
それほどまでに、組織が隠したい情報なのだろうか。それとも、ベルモット本人が、隠したい情報なのだろうか。
ベ「詳細は追って伝えるわ。貴方はすぐに対応出来るように用意をしていて頂戴。」
そう言って電話を切ったベルモット。その相棒は未だ視界に入ったまま。
ベ「・・・もう少し早ければ、面倒なことになんてならなかったのに。」
バ「おや、余程見られたくないものだったようですね。ちなみに、もう少し早ければ、というのは?」
ベ「貴方を問答無用で始末できたわ。」
そう言ってワインを一口含むベルモット。かなり、いや、随分と、ヤバい情報だったようだ。
ベ「それで?それをチラつかせたからには、それ相応の情報が欲しいということなのでしょう?」
こちらを見る目が、完全に変わっている。隙があれば、迷わず手を出す。そんな、表情。
バ「・・・困りましたね。僕はそこまで大事になるとは思わなかったものですから。フォーギヴンの情報を少し提示して頂ければそれで良かったんですけれど。」
ベ「・・・随分と、フォーギヴンに執着するわね。そんなに情報を手に入れられないことが悔しい?」
バ「えぇ、そうですね。深くまで掘り進めたつもりなのに、感触が一切ない。正直、コネは使い潰してしまいましてね。」
やれやれ、と肩を竦めればベルモットの雰囲気が少しだけ緩む。
バ「フォーギヴンという人間は、果たして存在するのかさえも僕は疑問になってきましたよ。」
ベ「・・・その疑問には答えてあげるわ。えぇ、いるわよ。フォーギヴンと呼ばれる人間は確かに存在する。アレに情報戦で勝つには・・・そうね、ないに等しいわね。」
バ「・・・僕の勝算は限りなく0ですか。」
そう告げれば、ベルモットは口元をニヒルに歪めて、いつもの調子に戻って言う。
ベ「アレはそういうもの。そうであれ、と言われてきた。」
バ「・・・なるほど。ちなみに、例の話はジンはご存じで?」
ベ「その話、口にした瞬間に命がなくなると思いなさい。」
ベルモットは、本気のようだった。