第13章 Vermouth
「ところでベルモット。聞きたいことがあるんですが。」
ベ「あら、何かしら?バーボン。」
今日はとても機嫌がよかった。何かあったわけではない。いえ、訂正しよう。何もなかったからこそ、機嫌がよかった。
バ「フォーギヴンのことです。」
ベ「内容次第ね。」
フォーギヴンに久々に連絡を取ってみようか、と思いスマホを開けた時だった。
バ「奴は、何者ですか?」
ピタリ、と動きを止めて正面に座っているバーボンを見る。
ベ「何者、とは?」
バ「情報屋。メインサーバー。恐らく本人自身の記憶力も恐ろしいものなのでしょうというのは分かっています。けれど、それ以上が分からない。まるで人物像が見えない。」
目の前の男は探り屋だ。どんな情報でさえも入手してくると言われている男。この男でさえ、フォーギヴンの情報を入手するのにかなり手こずっているようで、よく彼女の情報を聞き出そうとしてくる。
ベ「そうね。それがフォーギヴンの強さを表していると思わない?」
バ「えぇ。ですから、年齢をお教え頂けませんか?」
ベ「そうね・・・貴方が思っているよりは、若いと思うわよ?」
そう言いながら、出されたメイン料理を口に含む。
バ「VR-1。」
その言葉が出た瞬間。
ここが日本だとか、完全個室とはいえ、人目のつくところだとか。そんなことは一切頭になかった。
ベ「どこで知った。」
バ「・・・調べ物をしていた時に、引っかかったんですよ。まさか、貴方がそこまで動揺するものだったなんて思いませんでしたが。」
ベ「もう一度だけ言うわよ。どこで知ったの。」
隠し持っていた相棒を手に、男に差し向ける。
バ「・・・日本の組織の施設ですよ。VR-1の実験記録、と称されたレポートのデータが残っていましたので。」
ベ「そう。素直でいい子ね。」
バ「えぇ、ですのでその物騒なものを仕舞ってくれませんか?」
銃口を向けるのをやめ、電話をかける。
「はい。」
ベ「私よ。任務を伝えるわ。組織の施設を跡形もなく破壊しなさい。」