第12章 I and Mysterious Thief
楓「おかえり。」
家に帰れば、少女は電気も付けずにリビングのソファに座ってテレビを見ていた。パチン、と電気をつけると眩しそうに目を細める。
快斗「ただいま。電気くらい付けても良かったんだぜ?」
楓「お隣の子が来ちゃうんじゃないかな、と思ったの。」
あー・・・と納得する。青子なら電気が付いているのを見て、電話もせずに突撃してきそうだ。
楓「どうだった?」
快斗「ハズレ。あの坊主にも謎解きされちまったしなぁ。」
楓「そうみたいだね。ニュースで顔出てたし。」
快斗「へぇ。キッドキラーって・・・こんな坊主に付けちゃっていいのかよ。」
ふふ、と笑う少女にテレビ画面から視線をそちらに向ける。
楓「実際、貴方をあの場から逃げ出すのがやっと、というところまで追いつめてしまうのは彼だものね。」
快斗「・・・澪お嬢様はあの少年を応援したいということでしょうか?」
楓「・・・快斗の姿でキッドの口ぶりは、なんだか変な感じ。・・でもね、快斗。」
こちらを見て、ニコリと微笑む少女。
楓「下見の話、聞いてなかったんだもの。あれくらいの嫌味、言わせて頂戴。」
快斗「・・・悪かったよ。あの坊主が本当に解けるのか、試したくなってな。」
楓「・・・まぁ、無事に帰ってきたからいい。コナン君のことは置いておいて、どうだった?次郎吉おじさんは。」
そう告げる少女の目の奥は、こちらを見透かしたようだった。だから、俺は笑って言う。
快斗「アリだと思うぜ、俺は。また挑戦状が来たら」
楓「そっか。じゃあ今後に期待だね。」
自分事のように嬉しそうに笑う少女。
少女は、いや、俺は期待している。
あの爺さんが、パンドラを持って挑戦状を叩きつけてくることを。
少女は知っている。
俺がパンドラを探していることを。
俺は知っている。
少女が、パンドラを探してくれていることを。