第12章 I and Mysterious Thief
玄関で止めたのに、青子が家に入ってくる。
快斗「おい青子っ、」
青子「なによー!快斗が碌にご飯食べてないんじゃないかと思って見に来てあげてるのに!」
プンスコと怒っている。けれど、部屋に入られるのは非常に、不味い。澪がいる。
青子「それに快斗ったら掃除もあんまりやらないじゃない。それで、ご飯は食べたの?」
快斗「いや、まだだけど。」
青子「やっぱり!!青子が作ってあげるから、リビングでちょっと待ってて!」
快斗「だーっ!大丈夫だって言ってんだろ!料理くらい俺にだって出来るっての!!」
マズい。非常にマズい。このままでは青子も晩飯を食っていくことになる。澪は気にしない、と言いそうだけれど。
快斗「(俺が気にするっての・・・!!!)」
青子「・・・ねぇ、快斗。」
快斗「んだよ。」
青子「誰かいるの?」
快斗「は?」
鈍感な幼馴染が気付くわけがない、と思っていたのに、急にそう聞かれてギクリとする。
快斗「いねぇよ。なんで。」
青子「そうだよね。快斗の靴しか玄関になかったし。」
快斗「・・・。」
あれ、そういや澪の靴が無かったな、と玄関の記憶を掘り返す。あれ?・・・後で聞こう。
快斗「つーか、俺に構うほど青子は暇なのは分かったけど。これから友達と電話しながらゲームするつもりだから、悪いけど帰ってくれねぇ?」
青子「・・・快斗、そんなにハマってるゲームなんてあったんだ、知らなかった。」
快斗「わりぃかよ?」
青子「ううん。分かった。でもちゃんと!ご飯は食べるんだよ!!」
快斗「わーったって!!」
そう言いながら、青子は帰っていった。ふぅ、と一息吐いて自室にいる澪を呼びに行くと、澪が居ない。
快斗「・・・澪?」
パソコンも何もかもがなくて、まるで、最初から誰もいなかったかのようで。
快斗「澪?いないのか?」
「・・・快斗?」
だから、ひょっこりと仕掛け扉から顔を出した澪に、少し安心してしまった。
快斗「荷物も全部なくなってるからビックリしたぜ。」
楓「ごめんなさい。青子さんがもし部屋に入ってきたらと思って。」
そう言って元通りにパソコンなどを広げ直す少女を背にしてキッチンへ向かう。
楓「・・・ごめんなさい。」
小さく呟かれた少女の言葉は、聞こえなかった。