第12章 I and Mysterious Thief
快斗、と呼ぶようになって数日。
新聞に大きく載っている挑戦状。
『怪盗キッドに告ぐ。貴殿が所望するビッグジュエル『大海の奇跡』を潮留に在する我が大博物館の屋上に設置した。手中に収めたくば、取りにこられたし。』
楓「案外早かったね。」
快斗「だな。出したくてうずうずしてたみてぇだし。」
今日も今日とて、快斗の家にお邪魔している。机の上に放り出されていた新聞は、挑戦状に始まり、次郎吉おじさんの話題ばかりが掲載されている。
快斗「しかも、事前に澪が目星つけてたとこだしな。さっすが。」
楓「快斗は?もう用意出来たの?」
快斗「粗方なー。あとは当日だな。」
楓「・・・私、ここで待っててもいい?」
快斗「お、待っててくれるのか?じゃあさっさとやってくるか。」
ニヤリ、と笑う快斗。どうやら準備は問題なく進んでいるらしい。
快斗「そういや澪、晩飯食って帰るか?」
楓「・・・え、いいの?」
快斗「おぅ。全然。ただ・・・あー、青子来た時は難しいかもしんねぇけど。」
楓「・・・。」
チラリ、とパソコン画面を見てから快斗に視線を戻す。
楓「ねぇ、快斗。」
快斗「ん?」
楓「青子って、家の前にいる子?」
快斗「・・・え。」
ピンポーン、と軽やかにインターホンがタイミングよく鳴らされた。
快斗「マジかぁ・・・。」
楓「・・・隠れる?」
快斗「いや、いいよ。適当に理由つけて追い返す。」
楓「・・・そう。」
快斗が部屋を出て行ったところで、くるり、と隠し部屋に入り込む。
楓「・・・。」
怪盗KIDのお手伝いをしているからと言って、黒羽快斗のプライベートにまで入り込むつもりはなかった。というのに。
楓「・・・矛盾してるなぁ、私。」