第12章 I and Mysterious Thief
快斗「んー・・・どうすっかなぁ。」
楓「・・・ねぇ、快斗。」
快斗「ん?どうした。」
楓「次郎吉おじさんって、すごく目立ちたがりだよね。」
ふと、思い出したかのように話し出した少女。少し疑問に思いながら、快斗は返事を返す。
快斗「そうだなぁ。あの爺さん、自分が一番じゃないと気が済まないし。」
楓「ならきっと、報道陣もいっぱい来るし、観客も多いんでしょうね。」
快斗「・・・澪?」
悪戯を思いついたかのような少しだけ悪い表情をする少女に、頬が緩むのが自分で分かる。
初めて出会った、あの薄暗い裏道。あのとき少女は、ほとんど無表情で、人形のようだと思った。笑った表情でさえ、造り物のようで、目は笑っていないし、どこまでもこちらを見透かしているようで、正直恐ろしいと思ったのに。
目の前の少女はコロコロと表情を変えるようになった。目の奥が、笑うようになった。
心の底から、そう思っていると思える。
信用されている、というか、そんな話ではない、と薄々感じている。
彼女は、“絶対的な安心感”を、俺に見出している。
楓「・・・快斗?聞いているの?」
快斗「あぁ、聞いてるさ。で?澪はそんな悪戯したくてたまらない、みたいな表情をして、何を思いついたんだ?」
楓「・・・うそ、そんな顔してる?」
快斗「してたしてた。」
ケタケタと笑ってやれば、むぅ、と膨れて、けれど笑って少女は言うのだ。
楓「えぇ、とびきりの悪戯を思いついたわ。」
ふにゃりと笑いながら話す少女に、俺も笑いながら話を進める。
夜はまだ、始まったばかりなのだから。