第10章 Mystery Passenger
「どうしてバスに残ったの。」
楓「・・・治療、痛いわ。ベルモット。」
ベ「肝が冷えたわ。どうしてあんなことしたのよ。」
楓「・・・痛かったの。」
ベ「痛い?」
少女は、胸の辺りに手を置いて、言葉を続ける。
楓「ここが、痛くなったの。あの子がいなくなるって、思ったら。」
そう言われ、一瞬治療する手を止めてしまった。
楓「・・・ベルモット?」
ベ「・・寂しかったのね。」
楓「・・・寂しい?」
ベ「えぇ、あの子が居なくなったら、嫌だったのでしょう?辛かったのでしょう?それは、悲しい、寂しいってことよ。」
楓「・・・寂しい。」
ポツリ、と呟く少女。あまり理解は出来ていなさそうだけれど、少女は私を見て、言う。
楓「ねぇ、ベルモット。痛いは、寂しいなの?」
ベ「その時にもよるわ。・・・それより貴方、なんであの少年よりこんな大怪我してるのよ。」
楓「・・・二人に、怪我してほしくなかった。」
そう告げる少女に、頭を優しく撫でる。
楓「・・・ベルモットだって、あの子が怪我するの、嫌なくせに。」
ベ「えぇ。・・・だから、ありがとう。でも、貴方が怪我するのだって、とっても嫌よ。」
楓「ジンに怒られるから?」
ベ「怒るでしょうけど、そんな理由じゃないわよ。」
楓「あ、分かった。ウォッカがびっくりするからだ。」
そう言ってニコニコする少女に、つられて笑ってしまう。
ベ「そういうことにしておくわ。」
楓「えー教えてよー。」
少女が、年相応になった気がする。脳裏に浮かぶ、子供たちの姿。彼らが、この子をここまで・・・。
ベ「・・・。」
楓「?ベルモット?」
ベ「何でもないわ。ほら、包帯変えたんだし、服着なさい。」
楓「はーい。」
胸が、チクリとした。