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ネモフィラを夢に見る

第10章 Mystery Passenger





車を見送り、乗らなかった少女をキッと睨む。


コ「なんで乗らなかった。なんで隠してんだ。」
楓「・・・え?」
コ「怪我。」


そう言われて、初めて気づいたかのように少女は言葉を零す。



楓「・・・気付かなかった。」
コ「大体、なんでバスに残ってたんだ?死ぬかもしれなかったんだぞ!!」


思わず、怒っている口調になる。


楓「・・・バスに残ってなかったら、哀ちゃんが、居なくなってしまう気がしたの。」


ポツリと言葉を零した少女に、言葉を失ってしまった。確かに、歩美がこの少女がいないと叫ばなければ、灰原が居ないことに気付かなかったかもしれない。


楓「哀ちゃんがいなくなったら、痛いと思ったの。だから、残った。」
コ「・・・わかった。でも、次からはすんなよ。絶対、絶対俺を呼べ。いいな?」
楓「・・ん、わかった。」


そう言って笑う少女はどこか儚くて、思わず腕を掴んだ。


楓「っ、」
コ「わ、わりぃ!ここも怪我してんのかよ。」
「Cool kid!!」


そう声をかけてくる声が聞こえて振り返る。そこには、ジョディ先生がいた。


ジョディ「窓を割って女の子助ける、まるでジェームズ・ボンドです!」


隣にいる少女がどこかへ行かないよう、手を握れば、少女も軽く握り返してくる。


コ「007はジョディ先生の方だよ。足をかけて、謝るふりしてトカレフの安全装置入れたんでしょ?」
ジョディ「Oh, yes!!映画のように上手く行きました!!」


そう話をしていると、佐藤刑事の声が聞こえてくる。


佐藤「乗客のみなさーん!事情聴取があるので、車に乗ってください!」

コ「あ・・・僕たちもいかなきゃ。」
ジョディ「怪我、大丈夫ですか?」
コ「平気平気!」


そう言ってたけれど、後ろから袖をめくられて思わず声が出る。


コ「いっ・・・。」
新出「やっぱり、こんな大怪我してるじゃないか。そっちの女の子も、事情聴取はきちんと治療を受けてからだよ。」
コ「新出先生・・・。」


きゅ、と手を握る少女の力が強くなり、あぁそういや人見知りだったっけか、と思い出す。


コ「大丈夫だよ、先生いい人だから。」
楓「・・・うん。」




そう言って笑う少女は、やはり儚かった。



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