第10章 Mystery Passenger
「騒ぐな!!大人しくしていろ!!」
発砲した男はそう言って、こちらへ銃を向けてくる。
歩美「なに?なんなの?」
怯えて抱き着いてくる歩美。優しく背中を撫でる。
「まずは、前扉を閉めてもらうか?」
別の男がそう言いながら運転手に銃口を向ける。
「は、はいっ!!」
冷や汗をかきながら、運転手は扉を閉め、バスを発車させた。
楓「・・・。」
後ろをちらり、と見てすぐに視線を戻す。
咳をしている男。昨日、パソコンで見た男。
赤井秀一。
あぁ、誰だろう。面倒事を持ち込んだのは。ベルモット?赤井秀一?それとも・・・。
折角楽しみにしていたスキーが、少し遠ざかってしまい、不満が零れ落ちそうになる。
楓「・・・。」
楽しみにしていたのに。そう落胆し、外を見つめる。
東都の街並みが過ぎ去っていく。周りはこんなにも穏やかだというのに、どうしてバスジャックに遭わなければならないのだろう。
歩美「楓ちゃん?大丈夫?」
楓「うん・・・大丈夫だよ。ありがとう。」
抱き着いてくる歩美にそう答え、思案するもすぐに辞めた。
隣の椅子に座っている少年が、ジーッと犯人の方を見ている。
楓「・・・任せてしまお。」
歩美「え?」
楓「んーん。何でもない。」
きっと、彼がどうにかするだろう。
大人しくしているのが最善だ。