第10章 Mystery Passenger
楓「・・・。」
部屋で一人、画面を見る。
赤井秀一。
楓「・・・ばーゕ。」
このデータを消去しますか?
楓「・・・消せたら、いいのに。」
いいえ を押して画面を閉じる。
楓「・・・どうして。」
視界がぼやける。
まだ。まだダメ。
「いつかきっと、お前なら会えるはずだ。」
あぁ、早く。早くしなければ。
終わりは、すぐそこまで来ている。
そうでなければ、なんだというのだ。
「もう、ダメじゃない。食事を粗末にするのは良くないことよ。」
「そういうお前も碌に食わねぇくせに。」
「あら、少食って言うのよ。」
そうでなければ、この記憶は、この気持ちはなんだというのだ。
「痛いわよね。泣きたいわよね。・・・よく、我慢したわね。」
「泣いていい。怒っていい。恨んでいい。だから、生きろ。お前は、前へ進めよ。」
どうして、どうして私を置いて行ったの。どうして連れて行ってくれなかったの。
小さい私は、泣いている。
あぁ、こんなにも私は、感情を曝け出せていたのか。
「一人で泣くなんて、寂しいわ。」
「約束だ。お前は生きて、世界を知れ。」
「大丈夫。私達のことを完全に把握してる人なんていないわ。だから、生きるのよ。」
VR-1。