第10章 Mystery Passenger
楓「・・・え、ジンとウォッカ日本に来てるの?」
ベ「えぇ、昨日会ったわ。」
楓「そっか。・・・なんだか、ベルモット楽しそう。」
ベ「・・・楽しそう?」
楓「うん。ね、ベルモット。今度スキー行くの。だから、ご飯は・・・。」
ベ「えぇ、分かってるわ。友達が出来て良かったわね。」
楓「・・・そう?」
そう、首を傾げるフォーギヴンに、ベルモットも少し首を傾げる。
ベ「同年代の友達、欲しかったんじゃないの?」
楓「うん。でも、ベルモットからしたら、良くなかったんじゃないかなって。」
ベ「・・・。」
背中を、冷や汗が流れる。そんな話をしただろうか。そんな表情をしただろうか。いいえ、いいえ。
私は、そんなことはしていない。
ベ「・・・フォーギヴン、貴方、」
楓「ね、ベルモット。スキーって楽しい?初めてでとっても楽しみ。」
ベ「・・・えぇ、きっと楽しいわ。友達と一緒に、雪まみれになってきなさい。」
楓「えー雪って冷たいからあんまり好きじゃないのに。スキーって雪まみれになっちゃうの?」
ベ「えぇ。慣れてないとこけるわよ。」
楓「ベルモットもこけたの?」
ベ「こけないわ。」
にっこりと笑う少女。
楓「じゃあ、今のが落ち着いたら、ベルモットと遊びに行きたいな。」
知っているのに。いつからなのだろう。どうして、気付かなかったのだろう。
思わず握った、相棒をそっと背に戻して笑う。
ベ「えぇ。観劇にでも行きましょうか。」
今はまだ、蓋をさせて。
この感情に、この心に、別れを告げるまでの時間を、もう少しだけ。