第9章 Case of Dolphin Land Hotel
高木「・・・失礼しますね。」
公仁子「あ、ちょ!」
右のポケットから出てきたのは、透明なビニール袋。
高木「・・・空っぽの袋?」
公仁子「それが、なによ。」
刑事が明かりで透かしてみると、袋にはまっすぐ縦に指紋が4か所ついている。
高木「警部!この袋、指紋が付いています!」
公仁子「私のポケットに入れていたんだから、私の指紋が付いてて当然でしょう!?」
楓「ねぇ、お姉さん。駅で、ポケットに手を入れて、何してたの?」
その質問に、公仁子は少女をキッと睨む。けれど、すぐに辞めてしまった。ゾッとした。背筋が凍る、そんな莫迦なことがあるわけがないのに。
楓「答えられないこと、してたの?」
なんなんだ。なんなんだこの少女は。訳が分からない。怖い。恐い。こわいこわいこわいこわい。
目暮「山本さん?」
公仁子「っ!」
ハッとして、警部の方へ見る。けれど、少女からの視線が怖い。少女の方を見ているわけじゃないのに。視線がこちらを見ていると“わかる”。嘘を言ってはならないと、嘘をついても、見抜いているぞと。そう言われているようで、冷や汗が止まらない。あの子は、“分かっている”。
逃げれない。
公仁子「・・・直美が、許せなかったの。」
そう、話し始めれば、その視線は、消えた。