第9章 Case of Dolphin Land Hotel
「何にもないところだけど、ゆっくりしていってね。」
そう言ってにっこりと微笑む女性。
おかしいな。私、コナン君達が松茸狩りに泊まり掛けで行くって聞いたから、見送りに博士の家の前まで行っただけなのに。
楓「・・・あ、の、蘭さん。どうして、」
蘭「ん?なにが?」
楓「どうして、私をお家に招待してくれたんですか?」
そう聞くと、私を家へ誘ってくれた女性は笑って告げた。
蘭「だって、楓ちゃん、少し寂しそうだったから。」
楓「・・・寂しい?」
寂しいだなんて、思っていないのに。どうして。
蘭「楓ちゃんは凄く優しいんだよって、コナン君が言ってたの。だから、皆には用事があるって言ってたけど、本当は一緒に行きたかったんじゃないのかなって。」
楓「・・・どうして、そう思ったの?本当に、用事があったかもしれないのに。」
蘭「ふふっ。そう言うってことは、やっぱり用事なんてなかったんだ。」
楓「・・・あ。」
しまった。やってしまった。
蘭「博士の車、いっぱいで楓ちゃん乗れないもんね。自分も行きたいって言ったら、誰か行けなくなっちゃうから、遠慮してるんでしょ?」
楓「・・・。」
まさか、誘導尋問にかかるなんて思わなかった。気を緩めすぎているのだろうか。
蘭「だから、楓ちゃんさえ良ければ一緒に遊びに行かない?」
遊びに行く。その言葉に思わず蘭さんを見てしまう。
楓「あそ、ぶ?」
蘭「えぇ。ドルフィンランドとかどうかしら?イルカ好き?」
楓「楽しそう・・・あ。」
楽しそう、と呟いた私に蘭さんはキラキラと目を光らせる。
蘭「じゃあ行こう!きっと楽しいわよ!」
小五郎「なんだ?出かけるのか。」
蘭「あれ、そういうお父さんだって出掛ける準備してるじゃない。」
小五郎「その真横に競馬場があるんだよ。」
よっ、といいながら立ち上がる小五郎。蘭も慌てて鞄を持つ。
蘭「それじゃ、行こっか!」
楓「・・・はい!」
蘭さんの手は、とても暖かった。